日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P1-23
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DNA切断と修復
長期放射線被ばくによるサイクリンD1過剰発現はDNA二重鎖切断を誘導する
*落合 泰史志村 勉桑原 義和山本 和生福本 学
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抄録
一般的な放射線治療では、正常組織への被ばく影響を軽減するため、分割照射が用いられている。我々はヒト肝がん細胞株HepG2と子宮頚部がん細胞株HeLaを用い、分割照射の放射線応答を解析した結果、0.5 GyのX線を12時間毎に31日間分割照射した細胞株(31分割細胞)では、細胞周期の進行を制御するサイクリン D1が過剰発現していることを明らかにした。サイクリン D1の過剰発現は31分割細胞を, さらに31日間照射を休止した細胞株(31分割-休止細胞)でも安定に維持された。興味深いことに、31分割-休止細胞では、DNA二重鎖切断(DSBs)の指標の一つであるH2AXのリン酸化(γ-H2AX)が観察され、DSBsを持っていることが示唆された。また、γ-H2AXのフォーカスを持つ細胞はDNA合成期の指標であるPCNAで染色されることから、DNA合成期にDSBsが誘導されることが示唆された。
本研究では長期分割被ばくによるサイクリンD1過剰発現の生物影響について、特にDSBsの誘導に注目し、解析を行なった。31分割-休止細胞にサイクリンD1のsiRNAを導入し、発現を抑制した結果、γ-H2AX の減少が観察された。
以上より、長期分割被ばくによるサイクリン D1の過剰発現はDNA合成期にDSBsを誘導することを明らかにした。サイクリン D1はがん遺伝子であり、多くの癌細胞で発現亢進が報告されている。サイクリン D1が過剰発現した細胞では、DSBsが形成されることから、ゲノム不安定性を誘導することが考えられる。
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© 2009 日本放射線影響学会
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