日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-52
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放射線治療・修飾
植物由来抗酸化物質の培養表皮細胞に対する放射線防護効果
*松田 尚樹ハキム ルクマヌル三浦 美和里 あゆみ吉田 正博山内 基弘
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抄録

【背景と目的】
放射線診療や緊急作業などの計画被ばく時における健康リスク低減のために用いることのできる、副作用が少なく局所投与が可能な放射線防護剤の探索を目的として、植物由来抗酸化物質のガンマ線に対する防護効果をヒト表皮細胞を用いて検討した。
【材料と方法】
抗酸化物質として、ラジカルの捕捉が期待できるフェノール基、またはカルボキシル基に隣接した二重結合を有する、Caffeic acid(CA)、 Rosmarinic acid(RA)、trans-Cinnamic acid(TCA)、Hydroxy phenyllactic acid(HPA)および p-Coumaric acid(PCA)を用いた。これらの化合物をヒト表皮由来HaCaT細胞の培養液に加え、ガンマ線(Cs-137、1Gy/min)を照射した後、コロニー形成、細胞内酸化状態(CM-H2DCFDAの酸化開裂による蛍光)、およびDNA損傷量(γH2A.Xおよび53BP1陽性フォーカス)を指標として放射線防護効果を検討した。
【結果と考察】
5種類の化合物のうち、RA(0.1-1μg/ml)、CA(0.1-1μg/ml)、およびTCA(1-10μg/ml)が4-8Gy照射後の細胞生存率を10%程度回復させた。これらの化合物は、γ線4Gy照射による細胞内酸化状態の上昇を、それぞれ約20%、40%、および30%抑制した。また、ガンマ線1Gy照射15分および6時間後のDNA損傷量も、RA、CA、TCAにより10%-50%の範囲で減少していた。なお、用いた濃度範囲ではいずれの抗酸化物質とも細胞毒性を示さなかった。以上の結果より、植物由来抗酸化物質のうちRA、CA、TCAにはマイルドな放射線防護効果があり、その機構には細胞内に生じた放射線誘導活性酸素種の除去によるDNA損傷の低減があることが裏付けられた。これらの化合物が、細胞内抗酸化分子、あるいはDNA損傷修復分子を積極的に活性化することができればさらに魅力的であり、この点は今後の検討課題である。

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© 2009 日本放射線影響学会
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