日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-58
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放射線治療・修飾
不均一性腫瘍に対する炭素線照射効果―3種類の腫瘍を組み合わせた場合
*小池 幸子安藤 興一鵜澤 玲子古澤 佳也平山 亮一松本 孔貴吉田 光明岡安 隆一
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キーワード: 移植腫瘍, 増殖遅延, 高LET
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抄録
目的:ヒト原発腫瘍は他面的に不均一であり、放射線感受性もその1つである。本研究で我々は炭素線RBEに対する腫瘍不均一性の意義について実験的に調べることを目的とし、実験腫瘍を用いて人為的に不均一腫瘍をマウスに移植して調べた。材料・方法:3種類のマウス線維肉腫(#6107、#8697と#9037)を用いた。#6107は炭素線・ガンマ線感受性、#8697は炭素線感受性・ガンマ線中感受性、#9037は炭素線・ガンマ線抵抗性である。肉腫#6107、#8697と#9037細胞を同系C3H雄マウスに移植し、これが生着して成育した腫瘍を摘出して単一細胞浮游液を作製した。適切な混合比率にて2種類の肉腫細胞数を調整し、マウス下肢皮下移植した。腫瘍が7.5-8.0mm径に達した時点で、下肢腫瘍を290MeV/n炭素線またはガンマ線にて1回照射した。腫瘍増殖時間(TG time)を腫瘍毎に調べ、腫瘍増殖遅延時間(TGD time)を計算し、線量―効果関係を求めた。炭素線RBEは対照ガンマ線との比較にて求めた。1線量当たりのマウス数は5匹を用いた。結果:移植時の細胞数混合比を変えて移植し、腫瘍増殖時間を調べた。2種類の混合比を0:100,10:90,50:50,90:10と100:0の5段階に変化させて、3通りの組み合わせで計12種類の腫瘍が得られた。これに照射しTGD timeを求めた。TGD time=15日(等効果線量)よりRBEを求めた。(1)12種類の腫瘍の等効果線量はガンマ線で25から44Gy,炭素線で6.5から25Gyまでの間に分布していた。炭素線RBEは1.7から4.6の間に分布していた。(2) RBEの大きさは腫瘍の炭素線感受性に依存しており、炭素線感受性が高い腫瘍の方が低い腫瘍よりも大きいRBE値を示した。しかしガンマ線感受性はRBEに影響しなかった。(3)炭素線感受性腫瘍2種類(#6107と#8697) を組み合わせると、そのRBE はそれぞれの腫瘍のRBEと同等ないしより大きかった。(4)炭素線感受性と抵抗性の何れの組み合わせでも抵抗性腫瘍よりも大きなRBEとなる。即ち、炭素線感受性(#8697)と抵抗性(#9037)の組み合わせでは感受性腫瘍のRBE とほぼ同等であり、炭素線感受性(#6107)と抵抗性(#9037)の組み合わせでは中間のRBE になる。結論:炭素線RBEは腫瘍の炭素線感受性に依存しているが、ガンマ線感受性とは無関係である。不均一腫瘍のRBEを決定するのは炭素線抵抗性細胞でなく炭素線感受性細胞である。
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© 2009 日本放射線影響学会
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