主催: 日本放射線影響学会, 第52回大会長 大久保利晃 (財団法人 放射線影響研究所)
目的:本研究では低線量率(1 mGy/22h/日:0.045 mGy/h)と中線量率(400 mGy/22h/日:18.2 mGy/h)ガンマ線連続照射マウスの二動原体染色体異常頻度に線量と線量率効果があるかを調べるためにガンマ線長期照射を行った。方法:低線量率(1 mGy/22h/日と 20 mGy/22h/日)と中線量率(200 mGy/22h/日と 400 mGy/22h/日)ガンマ線をSPF C3H メスマウスに56日齢から最大615日齢まで連続照射した。リンパ球の染色体分裂像を得るために脾細胞をLPS, ConA, 2-ME存在下で48時間培養した。結果:ギムザ染色法で検出した二動原体染色体異常と環状染色体異常の和の頻度と、FISH法を用いて検出した二動原体染色体異常(Dic by FISH)頻度は、20 mGy/22h/日の低線量率照射では集積線量8000 mGyまでほぼ直線的に増加した。これらの染色体異常頻度の線量効果が直線および線量二乗効果関係と仮定して、直線及び曲線の勾配に相当する1次項の回帰係数の値を年齢補正を加味した重回帰分析にて求めたところ、中線量率から、低線量率まで線量率が低くなるに従い低下し、正の線量率効果が存在することがわかった。この結果は、国際放射線防護委員会(ICRP)が提唱している、1次項の値がDNA修復に非依存であると仮定して線量・線量率効果係数(DDREF)を求める現在の公式に矛盾があることを示している。高線量率照射で生じる異常頻度と比較することにより求めたDDREF値は集積線量により異なるが、100 mGyではDic by FISHを指標とすると5.2という値が得られた。また高線量率(890 mGy/min)と低線量率(20 mGy/22h/day)の線量効果関係曲線の1次項の値の比でとると3.0になった。結論:低線量率放射線照射被ばくの影響評価を行う上で、これらの結果は有益な情報となる。本研究は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。