抄録
【目的】我々は今までに、マウスに低線量X線を照射した場合、諸臓器中の抗酸化機能が亢進し、過酸化脂質量が減少することを報告してきた。一方、アルコールの摂取は、代謝の過程におけるスーパーオキシドアニオンなどの活性酸素種の産生や、その副産物であるアセトアルデヒドの除去による肝臓中のグルタチオン量の低下・枯渇が生じることに伴う脂質過酸化抑制能の低下など、酸化障害の一因となる。本研究では低線量X線照射による慢性アルコール障害の抑制効果の有無について検討した。【方法】8週齢・雌のC57BL/6JマウスにShamまたは0.5Gyを全身照射した。その直後からそれぞれに、Lieber-Decarliの方法に従いコントロール液体飼料または5%アルコール液体飼料を2週間与え、肝障害モデルを作製した。その後、マウスを屠殺し血液を採取するとともに肝臓を摘出し、試料に供した。肝機能や抗酸化機能などの分析は、常法に従った。【結果例と考察】アルコール液体飼料群はコントロール液体飼料群に比べ、血清中のグルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ活性およびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ活性が有意に高くなったことから、脂肪肝を発症して肝機能が低下することが確認できた。同様に、肝臓中の総グルタチオン量が有意に減少したことから、アルコール摂取に伴う抗酸化機能の低下も示唆できた。これに対して、事前に0.5Gyを照射し場合の肝障害の抑制効果の有無について言及する。