日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-73
会議情報

放射線応答・シグナル伝達
胎児・成体マウスにおける放射線誘発適応応答は重粒子線にも当て嵌まるか? II. 低線量粒子線前照射による高線量X線本照射の有害影響の修飾
*田中 薫王 冰VARES Guillaume尚 奕藤田 和子二宮 康晴江口 清美根井 充
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
放射線誘発適応応答(AR)の存在は、数多くの生物系においてすでに知られている。AR誘導に不可欠な条件の研究は、リスク評価に対して重要な科学的根拠を供給し、また新たな生物学的防御機構への重要な洞察を提供する。したがって、ARの研究はきわめて重要である。しかしながら、個体レベルでの研究では、そのほとんどが、X線照射によって行なわれたものである。進行中の一連の研究の中で、高LET重粒子線での照射によるARの誘導が可能であるか、in vivoでの実験ではyoung adult マウス、in utero(子宮内)での実験には胎仔マウスを使用して、両方について調べた。
1) 低線量X線での前照射が、高線量の重粒子線による本照射によって引き起こされた成長遅延、死亡、奇形という有害な影響を減少させることができるのか。2) 低線量の重粒子線照射が、高線量のX線照射によって引き起こされた有害な影響に対して、ARを誘導できるのか。3) 低線量の重粒子線照射は、高線量の重粒子線によって引き起こされた有害な影響に対して、ARを誘導できるのか。
重粒子線は、HIMACによって発生させたmono-beamの炭素イオン線、シリコンイオン線、鉄イオン線の3種類で、LET値はそれぞれ約15、55、 200 keV/マイクロメートルのものを使った。
前回我々は、低線量のX線前照射が、高線量の重粒子線での本照射によって引き起こされた有害な影響を、減少させることができることを報告した。今回我々は、in vivoでの重粒子線照射によるARの誘導について得られた、新たな結果を示すつもりである。これは、ARが、高LET放射線による低線量前照射により誘導されることを、個体レベルで実証した最初の成果である。興味深いことには、ARの誘導に成功するための必須な条件は、照射する粒子とLET値の両方、あるいはそのどちらか一方に依存しているように思われることである。
著者関連情報
© 2009 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top