日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P3-120
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放射線被ばく影響・疫学
原子力のリスク認知
―1983、1992、2007年の調査結果の比較―
*辻 さつき神田 玲子米原 英典
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抄録
原子力を始めとする科学技術や社会活動上のリスク認知に関しては、これまでに多くの研究が行われてきた。その結果、個人のリスク認知は、不確実な事象に対する主観的確率や損失の大きさの推定、不安や恐怖、便益性、代替の有無などの統合された認識であり、知識や価値観、性格などが影響するため、個人差が大きいことが知られている。我々は、1983年以降、リスクランキング法を用いて日常的なリスクに関する認知を調査し、異なったグループ間での差異および時代による変化を調べたので報告する。
放医研職員を対象に、30の科学技術や社会活動に関して被験者が感じるリスクの大きい順に順位をつけてもらうという方法で面接調査を行った(Slovic et al., 1981)。また全国の一般公衆に対して、ウェブを利用して同様のアンケート調査を行い、638人からの回答を得た。彼らには職業、学歴、家族、情報源や日常生活の安全についても質問した。
調査の結果、この25年の間に、認知された自動車のリスクランキング順位は下降した。一方、低濃度-慢性被ばくの健康リスク源(食品保存料、食品着色料、X線、抗生物質など)は、1992年の調査で一過的上昇が見られた。またこの25年間の間に、事務職(たとえば事務や研究補助)と研究者のリスク認知が類似してきている傾向にあるが、原子力に関しては両者の認知が大きく異なっていた。前者は一貫して原子力を最も危険であると判断しているのに対し、研究者での順位はチェルノブイリ事故等の社会事象に連動して変動した。さらにウェブ調査結果から、最近の一般公衆のリスク認知は、性別、年齢、職業によらずよく似ており、拳銃、原子力そして喫煙が最も危険であると判断していることがわかった。
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© 2009 日本放射線影響学会
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