抄録
背景:放影研では被爆者追跡調査(寿命調査:LSS)集団による放射線後影響の評価を行ってきた。
方法:当初120,321人のLSS集団の生存および死因について1950年より2003年まで追跡した。2002年線量体系(DS02)によって個人線量の推定されている86,611人を解析対象として、1Gyあたりの過剰相対リスク(ERR)と95%信頼区間(CI)をポアソン回帰モデルによって推定した。
結果:追跡期間中に50,620人(58%)が死亡し、量反応関係が線形であるとしたときのERR/Gyは、総死亡で0.22 (95%CI: 0.18, 0.26)、総固形がん死亡で0.47 (0.38, 0.56)、尿路がん死亡で2.62 (0.47, 7.25)、膀胱がん死亡で1.12 (0.33, 2.26)であり、その他、食道、胃、結腸、肝、胆のう、肺、および卵巣がんに対して有意に高かった。また、白血病では有意に高かったが(4.3, 95%CI: 3.1, 5.8)、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫では高くなかった。心疾患や脳卒中を含む循環器疾患では0.11(95%CI: 0.05, 0.17)、呼吸器疾患では0.21 (0.10, 0.33)と有意に高かった。固形がんでは、ERRに対する性、被爆時年齢、および到達年齢による効果の修飾(相互作用)は有意であった。
結論:LSS集団における、総死亡、主要ながん、および主要な慢性疾患による死亡リスクは、長期間にわたり被曝線量と量反応関係を示し有意に増加していた。白血病のリスクは初期に比較すると低いものの持続していた。脳卒中と心疾患のリスクは、中等度から高度被曝で増加していた。これらの相対危険度は女性および若年被爆者で高く、加齢とともに低下していた。本結果は、前回報告より6年間の期間が追加されているが、ほぼ同様の結果を示している。