抄録
紫外線主要DNA損傷(ピリミジン二量体)の修復機構であるヌクレオチド除去修復を欠損する遺伝病は、色素性乾皮症、コケイン症候群および硫黄欠乏性毛髪発育異常症など合併症も含めて8種類が存在し、紫外線感受性の亢進以外に様々な臨床症状を呈する。また、紫外線損傷の一つであるDNA1本鎖切断の修復を欠損する遺伝病として、アプラタキシン遺伝子に変異をもつ小脳失調症(EAOH/AOA1)が知られる。さらに、AAA症候群や脊髄小脳失調症14型ではアプラタキシンの核内輸送が阻害されることが最近判明した。修復欠損遺伝病における臨床症状の多様性や特異性の原因として、修復と転写の重なりや生成損傷の種類や量およびその修復能の組織間差異などが考えられるが、分子生物学的視点でどこまで説明できるようになったかを示す。