抄録
細胞に紫外線が照射されて形成されたDNA損傷はDNA複製を停止させ、発がんまたは細胞死の原因となる。これまで我々は、停止した複製フォークに集積したRAD18タンパク質が、PCNAタンパク質にユビキチン分子を付加することにより、損傷を乗越えて複製できるタイプの複製酵素を呼び込み、複製を再開させることを報告してきた。今回、放射線照射により切断されたDNA損傷部位にRAD18が集積し、リン酸化ヒストンH2AX、チェックポイント制御因子ATM, 癌抑制因子BRCA1、DNA修復因子53BP1などと共局在することを見つけた。これらの因子に焦点を絞り、RAD18の集積に必要な因子を調査した結果、複製開始前のG1期には53BP1が必要であることがわかった。また、精製したRAD18はin vitroで53BP1の1268番目のリジンに対してユビキチン分子を付加する活性を示した。このリジン残基を変異させた53BP1は、DNA二重鎖切断部位に集積する効率が低下していた。また、RAD18欠損細胞では正常な53BP1の集積能力も低下していた。RAD18欠損細胞および53BP1欠損細胞は、細胞周期のG1期に最も高い放射線感受性を示し、かつ2つの遺伝子は同じ遺伝学的経路にあることがわかった。以上の結果から、RAD18はDNA二重鎖切断部位に集積し、53BP1のモノユビキチン化を介して、損傷を修復するモデルを提唱する。