抄録
胎生9日目のC57BL/10JHir系統マウスに、低線量域を含む様々な線量のガンマ線を照射し、個体発生および神経冠細胞の分化に対する影響を調べた。その結果、ガンマ線では0.5 Gyまで妊娠率、出産率、離乳率および体重の低下が見られなかった。マウスでは放射線照射により神経冠細胞の分化が抑制され、メラノブラスト、メラノサイトが欠損することで離乳マウス(生後22日)の腹部中央等に白斑を生じる。この腹部白斑の頻度については、ガンマ線では0.25 Gy照射群から増加した。また、白斑面積も0.25 Gy照射群から増加した。次に、照射9日後の胎生18日の胎児を帝王切開で取り出し、生存胎児数、体重、発生異常、皮膚の毛球メラノサイトの分化等について調べた。ガンマ線照射個体では0.75 Gyでも一腹あたりの胎児数が減らなかった。尾の折れ曲がり等の発生異常は0.1 Gyからみられ、線量に応じて増加した。尾や四肢の付け根の内出血等は非照射群からみられ、線量に応じて増加した。また、皮膚の毛球メラノサイト数は、0.1 Gy照射群から背側も腹側も有意に減少し、線量に応じてさらに減少した。これらの結果から、ガンマ線は低線量域でもマウスの発生に影響を与え、尾、血管等の形成異常や神経冠細胞の分化抑制を引き起こすことが示唆される。