抄録
【目的】
固形腫瘍内の酸素化状態の操作処置による放射線照射後の肺転移への影響を、局所腫瘍内の休止期(Q)腫瘍細胞の感受性をも加味して分析する。
【方法】
B16-BL6腫瘍を下肢に移植したC57BL/6マウスにBrdUを連続的に投与し、固形腫瘍内の増殖期(P)腫瘍細胞を標識後、急性低酸素細胞分画(HF)を解除するニコチンアミド(NA)を担腫瘍マウスに腹腔内投与または、慢性HFを解除するとされる低温度温熱処置(MTH)を腫瘍へ施行し、その後ガンマ線を腫瘍に照射した。照射直後に、腫瘍を切離細切し単腫瘍細胞浮遊液を得、サトカラシン-Bと共に培養後、BrdUへの免疫蛍光染色法によって、照射時にQ細胞であったBrdU標識のない腫瘍細胞の微小核出現頻度(MNfr.)を得た。腫瘍内の全腫瘍(P+Q)細胞のMNfr.は、BrdUによる標識を行わなかった腫瘍から得た。他方、照射後17日後に肺転移結節数も計測した。
【結果】
(P+Q)細胞のガンマ線感受性はMTHよりもNAの併用によって、Q細胞のガンマ線感受性はNAよりもMTHの併用によって、より効率的に高められた。NAの併用もMTHの併用も両細胞分画の低酸素細胞分画(HF)を低下したが、特にNAは(P+Q)細胞のHFを、MTHはQ細胞のHFを効率的に低下した。無照射腫瘍では、NA投与が肺転移結節数を減少させ、腫瘍へのガンマ線照射後には、NA投与併用もMTH処置併用も照射後の肺転移結節数を減少させたが、特にNA投与併用が肺転移数を顕著に減少した。
【結論】
腫瘍内の酸素状態の操作処置は肺転移に影響する潜在力を有し、中でも急性HFを解除するNA投与は肺転移数を減少するためには有望と考えられた。