抄録
エダラボン(Radicut®, 3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)は脳保護剤として2001年より日本で臨床利用されているフリーラジカル捕捉剤である。その高いラジカル捕捉作用から近年では放射線防護剤としての利用も検討されている。臨床における関心から抗酸化作用を調べた研究は多く存在するが、その反応性に関する研究については少ない。過酸化ラジカルとの反応や酸化反応を引き起こす酵素を使った実験結果が報告されているに過ぎず、OHラジカルとの反応性を調べた報告はほとんどない。OHラジカルは放射線による間接効果の主な原因であると考えられており、その反応性を評価することは重要である。本研究では、エダラボンとOHラジカルとの反応メカニズムを明らかにすることを目的とし、パルスラジオリシス法を用いて、エダラボンとエダラボンのフェニル基をメチル基で置換した1,3-dimethyl-2-pyrazolin-5-oneについてOHラジカルや他の酸化性ラジカルとの反応性を評価した。結果、エダラボンの反応においてOHラジカルは他の酸化性ラジカルとは異なる中間体を生成することが明らかとなった。一方、1,3-dimethyl-2-pyrazolin-5-oneの反応においてはOHと他の酸化性ラジカルとで同一の中間体を生成しており、エダラボンとOHラジカルとの反応は、フェニル基が重要な役割を担っていることが示された。従来、エダラボンの酸化性ラジカルとの反応性のメカニズムは電子移動反応や水素引き抜き反応であると考えられていたが、OHラジカルとの反応についてはフェニル基への付加反応が主たる反応であると考えられた。