日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OC-3
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活性酸素・ROS
内在性スーパーオキシドによる細胞増殖阻害及び染色体不安定化に対するアスコルビン酸の抑制効果
*田野 恵三井上 絵里吉居 華子縄田 寿克関 政幸榎本 武美渡邉 正己
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抄録
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、有害活性酸素種であるスーパーオキシド(SOX)を過酸化水素に触媒する酵素である。高等真核細胞では細胞局在性を異にする3種類のSODが知られている。我々は、内在性SOXの増加が細胞の生理作用に如何に関与するかを解析することを目的として、細胞内局在性に異なる2種類のSOD1、2の条件欠損細胞を作成した。これらは、それぞれSODの遺伝子欠損細胞にヒトSODのテトラサイクリン抑制型のcDNAが導入されており、ドクソサイクリン (DOX) 添加によりcDNAの発現が抑制されると同時に、SOD1あるいはSOD2が枯渇し、人為的に内在性SOXを増加させることができる。
DOX添加後、ヒトcDNA由来のSOD 蛋白は96時間で検出限界以下になる。これに伴ってSOD1枯渇細胞では、増殖速度が低下し致死となった。一方、SOD2枯渇細胞は致死にはならないが増殖遅延が観察された。SOD1、2それぞれの枯渇細胞の低酸素培養では、酸素濃度依存的に細胞増殖遅延、あるいは致死効果が軽減された。
SOD1枯渇による致死効果はアスコルビン酸(APM)のみによって抑制され、NACやTironでは抑制できなかった。一方、SOD2枯渇による増殖遅延は、APM、NAC、Tiron全てで抑制することが出来た。
DNA損傷の鋭敏なアッセイの一つとして、自発的な姉妹染色分体交換頻度 (SCE) 及び脱塩基部位を測定した。SOD1枯渇細胞は SCE頻度、脱塩基部位ともに、その顕著な上昇が認められた。さらにそれらの増加は、双方ともアスコルビン酸の添加によって抑制された。
以上の結果から、内在性SOXの上昇に伴ったゲノムDNA損傷が見られ、細胞死や細胞増殖遅延をもたらす事が示唆された。さらにこれらを抑制するAPMと他のスカベンジャーの効果に著しい違いは、内在性SOXを増加させる2つのSODの細胞内局在性に依存している事を示している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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