日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OC-8
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放射線治療・感受性
8-Amino-adenosineによる放射線誘導細胞死の増感効果
*女池 俊介山盛 徹安井 博宣松田 彰稲波 修
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抄録
【目的】近年、固形腫瘍に対する放射線致死効果の増強を目的とし、放射線と制がん剤の併用が広く行われている。プリンアナログである8-amino-adenosineはアデノシンキナーゼなどによって三リン酸化され8-amino-ATPとして蓄積し、内因性ATPプールの枯渇作用やRNA・DNA合成阻害作用を示す制がん剤であり、通常のDNAのみをターゲットにする制がん剤と比較し、高い放射線増感効果が期待される。そこで本研究では、固形腫瘍細胞において8-amino-adenosineの併用による放射線誘導細胞増殖死およびアポトーシスの増感効果ならびにその誘導メカニズムについて検討を行った。
【方法】ヒト肺がん由来A549細胞に対し、8-amino-adenosineの存在、非存在下で放射線照射を行った。細胞増殖死の評価はコロニーアッセイ法により行った。アポトーシスはPIを用いた形態学的観察により評価した。アポトーシス関連タンパク質の発現の検討は各種特異抗体を用いたウエスタンブロット法にて行った。
【結果】8-amino-adenosineを処理した細胞では、放射線誘導細胞増殖死ならびにアポトーシスの増加が見られ、制がん剤の併用による放射線増感効果が観察された。また、広域カスパーゼ阻害剤ならびにカスパーゼ3、8、9の特異的阻害剤の効果を検討したところ、全ての阻害剤で放射線誘導アポトーシスの減少が見られた。この結果から、併用処理によるアポトーシス誘導はカスパーゼ依存的であり、その実行経路にはミトコンドリア経路のみならずデスレセプター経路も関与していることが示された。次に、アポトーシス関連タンパク質の発現について検討を行ったところ、抗アポトーシスタンパク質であるサバイビンの発現抑制が観察され、このアポトーシス増感の要因の一つになっていると考えられた。現在、このアポトーシスの増感作用に関して8-amino-ATP自体が促進的に寄与している可能性について検討中である。
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© 2009 日本放射線影響学会
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