日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OB-2-2
会議情報

B 放射線応答・シグナル伝達
放射線暴露後の様々な組織におけるp53とp21 蛋白の経時的発現動態
*大津山 彰岡崎 龍史法村 俊之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
ストレスによるp53タンパクの発現パターンは、培養細胞では経時的に様々な動態を細胞種により示すことが知られている(1)。一方、個体における放射線被曝後のp53タンパクの発現パターンも、臓器によって異なっている可能性がある。各臓器のp53タンパクの発現パターンを知ることは、放射線感受性を推定する際のエンドポイントを決めるのに重要となる。
今回、マウス(C57BL、雌、7週齢)にγ線8Gyの全身照射を行い、脾臓、皮膚のp53、及びp21タンパクの経時的発現を観察した。また、p53の発現動態とアポトーシスの関係についても観察し、臓器特異性の有無について調べた。
脾臓のp53タンパク経時的発現には二相性のピークがあり、一つ目のピークは照射4時間後、二つ目のピークは照射44時間後にあった。p21タンパクもほぼ同時期に二つの発現ピークがあった。皮膚のp53とp21タンパクには明らかな発現ピークは認められなかった。これらのことは、放射線高感受性細胞の多い脾臓では、ほとんどの細胞が放射線照射に対し一斉に反応し、このような反応パターンを示すと考えられ、皮膚では反応する細胞が少なく、明確なピークとして検出できないと考えられた。脾臓のアポトーシスは、p53とp21タンパクの一つ目のピークに同調していたが、二つ目のピークには同調しなかった。このことは、一つ目のピークが、いわゆるp53タンパク発現からアポトーシス発現へのカスケードを示すとみられるが、二つ目のピークはアポトーシス誘発に関わっていないと考えられた。
個体における放射線被曝後のp53とp21タンパクの経時的発現パターン及びアポトーシス発現パターンは、臓器によって異なることが示唆された。
(1)E. Batchelor, A. Loewer & G. Lahav, The ups and downs of p53: understanding protein dynamics in single cells, Nature Rev. Cancer, 9, 371-377, 2009.
著者関連情報
© 2010 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top