日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OB-2-5
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B 放射線応答・シグナル伝達
p53分子内の亜鉛イオン結合部位を標的とする新規阻害剤の開発
*大谷 聡一郎森田 明典青木 伸MOHD Zulkefeli板倉 寿成王 冰田中 薫岡崎 遥奈吉野 美那子池北 雅彦
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抄録
我々は、オルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)が、p53転写依存性・非依存性の両経路を抑制する阻害剤として機能し、腸死を克服できる初めてのp53阻害剤であることを明らかにしている。放射線防護効果が報告されている他のp53阻害剤としては、ピフィスリンαやピフィスリンμが知られているが、これら3つの阻害剤の内、防護効果の最も高いバナデートのみがp53変性作用を有していることを見出した。我々は、このp53変性作用をバナデートの特徴と捉え、p53変性作用を有する新しい阻害剤の探索を進めた。一方、p53変性作用は、p53分子内に存在する金属イオン結合部位に配位する亜鉛イオンの解離によって生じることが報告されていた。  そこで本研究では、p53依存性の放射線誘発アポトーシスを引き起こすMOLT-4細胞を用いて、亜鉛キレート化剤のp53阻害剤としての有効性評価を行った。その結果、検討した5種のキレート化剤の内、2種がアポトーシス抑制効果を示した。アポトーシス抑制効果が最も高かったBispicenは、バナデートと同様にp53変性作用を示し、転写依存性・非依存性両経路のアポトーシス過程を抑制した。さらに、p53ノックダウン細胞株での比較から、Bispicenのアポトーシス抑制効果がp53特異的であることも明らかとなった。今後は、マウスモデルでのBispicenの放射線防護効果の検証も予定している。
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© 2010 日本放射線影響学会
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