日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OF-1-1
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F 被ばく影響・疫学
染色体異常を指標とした放射線線質係数とマイクロドジメトリーを連結した中性子RBEの汎用数理モデル
*佐々木 正夫
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抄録
「目的」飛跡平均LETを変数とする放射線線質係数、Q(R)、は放射線影響評価基準の設定の土台となっているにもかかわらず、その生物学的定量基盤は極めて弱体である。最近、我々は染色体異常を指標とした放射線荷重係数を単純型DNA二重鎖切断の二成分誤修復(binary misrepair)のLET依存の確率密度関数として数量化した。ここでは、それをマイクロドシメトリー量と連結することにより中性子のRBE推定に用いる。
「方法」染色体異常の反応断面積とDNA二重鎖切断の反応断面積のLET依存関係から放射線Xのγ線に対する最大RBE(RBEM)はLET(L)の関数として以下のように表すことができる(Sasaki, M. S., Int. J. Radiat. Biol., 85:26, 2009)。
RBEM={[F(LX)LX2n-1]/[F(Lg)Lg2n-1]}exp{-2q1(LX-Lg)-2q2(LX2-Lg2)}、
F(L)はDSBの二成分反応と染色体異常の割合のLET関数。qはそれぞれover-killingと複雑型DSBに起因する細胞死による修飾係数。nはLETに対するDSB反応断面積の勾配。文献に見られる中性子マイクロドジメトリーデータから線エネルギー(y)の確率密度分布(f(y))を求め、r(y)=RBEM(L)として中性子のRBE,RBEM=∫r(y)f(y)dy/∫f(y)dyを求める。
「結果・考察」RBEMは、2MeV以上の単色中性子ではエネルギーとともには小さくなるが、2MeV以下の中性子では核分裂中性子・熱外中性子も含めRBEMは殆ど変わらない。この結果は中性子による染色体異常の線量効果をよく説明する。
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© 2010 日本放射線影響学会
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