日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PD-7
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D 低線量・低線量率
焦電性結晶による低線量X線源の開発
*花元 克巳迫田 晃弘片岡 隆浩川辺 睦永松 知洋山岡 聖典
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抄録

【目的】焦電性結晶は、真空中で温度変化を与えることにより、高エネルギー電子を放出する。この高エネルギー電子を金属ターゲットに衝撃することにより、X線の発生が可能となる。これを利用すると、高電圧電源が不要で、非常に小型のX線源を作製することができる。この小型のX線源は、空間分解能の高い局所照射が可能で、低線量X線照射等の基礎研究には非常に有用と考えられるが、X線の発生を制御するための方法についてほとんど報告がない。本研究では、焦電性結晶を用いた小型の低線量X線源を作製するための基礎研究として、気圧の変化に対する発生X線のエネルギーと強度を調べた。
【方法】焦電性結晶としてLiTaO3(z-cut、10 mm×10 mm×0.5 mmt)を用いた。結晶の+z方向表面から約4.5 mm離れた位置に電子コレクタ電極(30 mmφ、厚さ2 mm)を配置し、電極の中心に1 mmφの孔を開け、結晶に面していない側に厚さ5μmの銅箔を取り付けた。銅箔より約3 mm離れた位置にCdZnTe検出器を設置し、X線の検出を行った。結晶を加熱し、温度を室温から約120℃に温度上昇させるときに放出されるX線を測定した。平均温度変化率は1.5 K/sに固定し、気圧は10から25 Paの間で変化させた。
【結果と考察】同じ気圧の条件でも、測定結果にばらつきがあるが、気圧が低いほど、放出されるX線のエネルギーと強度が大きくなる傾向が見られた。気圧が10 Paのとき、得られたX線の最大エネルギーは20 keV、X線の総カウントは約105に到達した。このときの実効エネルギーを8.4 keVとし、放出されたX線が全て1cm3の水に吸収されたとすると、1回で約0.2 mGy/cm2の照射が可能になることがわかった。
【謝辞】本研究の一部は科研費・挑戦的萌芽研究(22659221)の助成を受けて行われた。

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© 2010 日本放射線影響学会
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