日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PF-11
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F 被ばく影響・疫学
ヒト臍帯血造血幹/前駆細胞の放射線感受性と妊娠/出産関連因子との関連性
*大森 厚子千葉 貴子柏倉 幾郎
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抄録
臍帯血は胎児の末梢血であり、造血幹細胞を豊富に含んでいるため近年造血幹細胞移植への応用は増加している。一般に造血幹/前駆細胞は、放射線や化学療法剤のような細胞外酸化ストレスに対して感受性が高く、その放射線感受性には大きな個体差が存在する。しかしながら、放射線感受性の個体差についての情報は乏しい。本研究では、分娩の際の母子情報に基づく妊娠/出産関連因子が放射線感受性に何らかの影響を及ぼす可能性を検討する目的で、造血幹/前駆細胞の放射線生存率と妊娠/出産関連因子との関連性について検討した。インフォームドコンセント実施後、単胎正期産児の分娩時に採取された臍帯血63検体を対象とした。臍帯血採取後24時間以内にFicoll-paqueを用いて単核球低比重細胞(LD cells)を分離後、磁気ビーズ法によりCD34陽性細胞(CD34+ cells)を分離精製し、造血幹/前駆細胞とした。CD34+ cellsはX線発生装置を用いて2 Gy照射を行った。白血球前駆細胞(CFU-GM)、赤血球前駆細胞(BFU-E)、混合前駆細胞(CFU-Mix)はメチルセルロース法によるコロニーアッセイで、巨核球前駆細胞(CFU-Meg)はプラズマクロット法で評価し、それぞれの放射線生存率を求めた。その結果、児体重、胎盤重量、臍帯血量、総LD cells、及び総CD34+ cells間に、相互に有意な正の相関が観察された。この時、総LD cellsとCFU-Meg 生存率との間に有意な負の相関が観察された。また、CFU-GM生存率は男児が有意に高かったが、一方CFU-Meg生存率では女児が有意に高い値を示した。次に、造血幹/前駆細胞の放射線生存率と季節変動との関連性を検討すると、CFU-GM生存率は春(3-5月)が秋(9-11月)より有意に高値を示し、逆にCFU-Meg生存率は春が秋より有意に低値を示した。更に、妊婦の居住地で比較した総LD cellsでは、里帰りで出産した場合が市内在住妊婦の場合より有意に高値を示した。臍帯血の造血幹/前駆細胞の放射線感受性は、児の性別や分娩月、妊婦の居住環境に影響される可能性が示唆された。
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© 2010 日本放射線影響学会
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