広島市は、2008年に、原爆投下直後に黒い雨を体験した可能性のある広島市及びその近郊の居住している31598名を対象としたアンケート調査を行った。その調査では、黒い雨を体験したか否かの他、体験者の場合には、その場所(役場や学校など)、雨の降り始めの時刻(時単位)、同降り止んだ時刻(時単位)、雨の強さ、雨の色、飛遊物の目撃の有無について郵送による自記式回答が得られている。各回答者のうち黒い雨体験者に関しては、その場所毎に類別され、それぞれの調査項目について、平均値や比率により要約を行った。さらに、体験者のうち体験場所および体験時刻が記載されていた1565名分を対象にして、それらの要約値に対するノンパラメトリック回帰分析を適用し、黒い雨の各特性値に関する時空間分布を推定した。 その結果、広島での黒い雨は午前9時頃広島市西方郊外で降り始め雨域を北西に拡大しながら10時頃沼田・湯来東部付近で最強になりその後衰弱しつつ雨域を縮小しながら北上し午後3時頃加計付近で消滅したことが推測された。また、線形変換による調整後の降雨時間が1時間未満と推定される領域の外縁が、従来からいわれていた宇田雨域よりも広く、現在の広島市域の東側および北東部側を除くほぼ全域と周辺部に及んでいた。