日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OB-2-2
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B: 放射線応答・シグナル伝達
メダカの培養細胞を用いたp53遺伝子の機能解析
*張 添翼漆原 佑介尾田 正二三谷 啓志
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抄録
p53遺伝子は、哺乳類において細胞の恒常性の維持に不可欠であることが知られている。魚類では、p53遺伝子の存在が報告されているが、配列や機能ドメイン、活性部位等については未だに多くのことが明らかとなっていない。ゼブラフィッシュではp53をノックアウトすると、アポトーシスが起こりにくく、癌化しやすくなることが明らかとなっている[Berghmans S, Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jan 11] 。メダカにおいてもp53をノックアウトすることで、アポトーシスが起こりにくく、癌化を起こしやすいことが明らかとなっている[Genome Biology 2006, 7:R116]。本研究では、メダカp53遺伝子の機能について明らかにするために、メダカp53-/-系統由来細胞の表現型を野生型細胞と比較解析、またp53の発現プラスミドの導入によるp53機能回復実験から、メダカp53遺伝子の機能を解明することを目指している。まず初めに、CAB、HdrRの二つの近郊系メダカ由来のp53-/-細胞について、アポトーシス細胞をAnnexinVにより標識し、FACSを用いて定量的に解析した。その結果、両系統ともにp53-/-細胞では非照射、照射(5Gy, 10Gy)後のアポトーシス細胞割合が野生型細胞に比べて顕著に低下していることが明らかとなった。また、野生型細胞にマウスp53阻害剤であるPifithrin-α. Hydrobromideを投与したところ、p53-/-細胞と同程度までアポトーシス細胞割合が低下した。このことから、メダカにおいてもPifithrin-αがp53阻害作用を持つことが明らかとなった。p53遺伝子はDNA修復に関与しているという報告がある。そこで、次にコメットアッセイを用いて、γ線照射後に生じるDNA二本鎖切断(DSBs)の修復能力を解析した。その結果、野生型細胞はγ線照射1h、2h後にtail momentが顕著に低下し、DSBが修復されたことを確認できたが、p53-/-細胞ではtail momentの低下に遅延が見られた。このことから、p53-/-細胞ではDNA修復力が弱いことが示唆された。DNA修復過程ではいち早くヒストンH2AXがリン酸化されることが知られていることから、p53との関係を調べるために、γH2AXフォーカスアッセイを行った。その結果、野生型細胞とp53-/-細胞の間に有意差は見られなかった。このことからp53はH2AXリン酸化には関与しておらず、脱リン酸化やさらに下流の因子と関わってあると考えられる。現在、p53過剰発現ベクターを導入したp53欠損細胞でレスキュー実験を行い、アポトーシスやDSB修復能の回復状況を解析している。
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© 2011 日本放射線影響学会
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