大学体育学
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研究資料
大学生サッカー選手における指導者の言葉がけと自己能力評価の関係性
安部 久貴村瀬 浩二
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キーワード: サッカー, 有能感, 言葉がけ
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 13 巻 p. 53-59

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抄録

指導者の言葉がけは選手の有能感、延いては内発的動機づけに影響を与えると考えられている。しかしながら、実際のスポーツ指導現場における指導者の言葉がけと選手の有能感について、観察法を用いて検討している研究は限られているのが現状である。そこで本研究では、指導現場における指導者の言葉がけと選手のスポーツ有能感の関係性について検討することを目的とした。ある大学男子サッカー部の一人の指導者と23名の選手が調査対象者であった。指導者の言葉がけは10週間記録され、以下の7つの指標に分類された。(1)ポジティブな評価、(2)ネガティブな評価、(3)直接的な示唆、(4)間接的な示唆、(5)統制的声かけ、(6)親和的声かけ、(7)その他。また、調査期間前後に各選手は10の下位尺度((1)状況に応じたパス&コントロール技能、(2)スピード、(3)ドリブル技能、(4)力強さ、(5)持久力、(6)守備技能、(7)リーダーシップ、(8)競技意欲、(9)ロングキック技能、(10)ヘディング技能)から構成される質問紙調査に回答した。その結果、選手の有能感と指導者の言葉がけに有意な関係性があることが明らかになった。まず、賞賛といった肯定的な言葉がけの頻度が、状況に応じたパス&コントロール技能やドリブル技能に関する有能感と負の関連性を示しているが明らかになった。この結果は、大学生サッカー選手は、指導者からの肯定的な言葉がけよりも自己比較や内在化された達成基準を基にして自身の能力評価をしていること示唆している。一方で、指導者から叱責などの言葉がけとパス&コントロール技能に関する有能感に正の関係性が確認された。競技スポーツにおいては、勝利という明確な目標を指導者と選手が共有していると考えられる。その場合、否定的な表現のプレーの指摘であったとしても、指摘を受けた選手は指摘の背後にある指導者の教授的意図を理解できると考えられる。その結果、否定的な評価でも状況に応じたパス&コントロール技能に関する有能感が向上した可能性がある。

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