日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OB-5-2
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B: 放射線応答・シグナル伝達
免疫組織化学と電子スピン共鳴法を用いた腫瘍における放射線照射後の再酸素化機構に関する研究
*永根 大幹安井 博宣山盛 徹中村 秀夫稲波 修
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抄録
【目的】古くから腫瘍組織の放射線に対する反応として、腫瘍低酸素領域の再酸素化という現象が知られているが、この再酸素化の詳細な動態およびメカニズムは未だ明らかではない。そこで本研究では、二種類の低酸素集積性化合物を用いた免疫組織化学的手法と酸素感受性プローブを用いた電子スピン共鳴法(ESR)により、放射線照射後の腫瘍内酸素環境の変動と再酸素化に関与する因子を明らかにすることを目的とし、研究を行った。
【方法】移植腫瘍モデルとしてマウス扁平上皮癌SCCVII細胞を使用した。低酸素領域の変化を描出するために、X線照射前の低酸素領域をpimonidazoleにより標識し、X線照射後の低酸素領域をEF5により標識した。X線照射後、経時的に酸素分圧を測定するため、酸素感受性ESRプローブであるLiNc-BuOを用いたin vivo ESRにより酸素分圧を測定した。腫瘍組織における血流量変化を評価するため、Hoechst33342による組織灌流量試験を行った。また一酸化窒素(NO˙)の再酸素化への関与を検討するため、NO˙合成酵素阻害薬であるL-NAMEを使用した。
【結果】X線照射前の低酸素領域と比較して、照射24時間後の低酸素領域は有意に減少していた。その後、照射48時間後では低酸素領域の回復が観察された。in vivo ESRによる酸素分圧測定では照射24時間でピークとなり、48時間以降は照射前と比較して高い水準で安定するという二相性の再酸素化が観察された。また、照射24、48時間後において組織灌流量は有意に増加した。L-NAMEの投与により照射24時間後の再酸素化ピークは消失し、組織灌流量も減少した。以上の結果から、放射線照射後の再酸素化には二相性の変化が生じること、およびNO˙が第一相の再酸素化の原因である可能性が示唆された。
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© 2011 日本放射線影響学会
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