抄録
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Captue Therapy BNCT)の線量の上限は正常組織の耐用線量内に収められるため、人体の放射線感受性により治療線量が左右される。中性子照射実験により、BNCTにおける放射線感受性の異なる細胞・マウスを用いて感受性の差を調べた。細胞レベルでは、放射線高感受性細胞における生物学的効果比(RBE)検討を行った。CHO細胞の突然変異株でKu80欠損のため放射線に誘発されるDNA二重鎖切断修復ができず放射線感受性の高いxrs-5細胞を用いてコロニーアッセイによる殺細胞効果による比較を行った。放射線高感受性マウスにおけるRBE検討では、放射線に高感受性で、放射線誘発DNA二重鎖切断の修復障害のあるSCIDマウスを用いて中性子照射による口腔粘膜障害死による比較を行った。BNCTの殺細胞効果におけるRBEはCHO細胞が2.0-2.1およびxrs-5細胞は1.4-1.8であり、中性子照射においてはCHOとxrs-5細胞間の放射線感受性の差異が小さくなった。放射線口腔死は頭部に放射線照射後に認められる飢餓死であり、中性子のin vivoにおける正常組織のRBEを求める手段として昨年同様に採用した。中性子照射の口腔粘膜傷害死のRBEはC3Hマウスが2.0およびSCIDマウスは1.6であり、中性子照射においてはC3HマウスとSCIDマウスの放射線感受性の差異がγ線照射時に比べ小さくなった。