日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OF-3-2
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F: 被ばく影響・疫学
メダカ胚を用いた脳の放射線傷害時におけるミクログリア細胞3Dイメージング
*保田 隆子日比 勇祐朽名 夏麿尾田 正二三谷 啓志
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抄録
哺乳類の胎児は母親の胎内で発生し、脳は皮膚で覆われているため、発達中の脳発生異常を詳細に観察することは困難である。一方、メダカ胚は体外で発生し、かつ卵殻が透明なので、発生の全過程を詳細に観察できる利点を有するモデル生物である。そこで、メダカ胚を用いて、放射線による発生中の脳への影響(ガンマ線10Gy)をwhole-mountアクリジンオレンジ染色により調べた結果、照射7-10時間後に2種類の特徴的な形態をしたアポトーシス、1)核濃縮した単一なアポトーシス細胞、2)それらが集積した細胞塊(核濃縮した単一なアポトーシス細胞が集積したもの)を視蓋の周縁部に観察した。後者は、まるでバラの花びらのような特徴的な様相を呈していたので、以降この形態を“ロゼット状のアポトーシス”と呼ぶ。ロゼット状のアポトーシスは、照射35時間後位まで継続して観察され、その後それらの数が減少する。電子顕微鏡による詳細な形態観察の結果、このロゼット状のアポトーシスは、1)アポトーシス細胞が10-15個集積したものであること、2)一つの細胞膜に包まれ、その中で細胞塊が貪食されていること、が判明した。 ミクログリア細胞は、定常状態において脳内の監視を担っており、脳内に細菌感染などが起こると免疫細胞として働き、それらを排除することが知られている。つまり、中枢神経ではこのミクログリア細胞が貪食細胞として働く。メダカでも、ミクログリアが脳内の放射線誘発アポトーシス細胞除去を行う貪食細胞として働き、1つのミクログリア細胞がアポトーシス細胞を多数集めて貪食する様相がロゼット状のアポトーシスではないか、と考えられた。そこで、ミクログリア細胞に特異的なApolipoproteinE (ApoE)遺伝子の発現をin situハイブリダイゼーション法により調べたところ、眼、中脳においてApoE陽性細胞が照射後に大きく肥大化して観察された。このような脳内で起こる放射線誘発アポトーシスにミクログリア細胞が働くことをin vivoで観察した報告は他に見当たらない。これらwhole-mount in situ染色をした胚の連続組織切片(8μm)をテクノビート樹脂により作成し、これら組織切片像約40枚を3D構築することによって、ミクログリア細胞とロゼット状のアポトーシスの局在を、脳全体で観察することに成功したので、ここに報告する。
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© 2011 日本放射線影響学会
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