日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OF-3-3
会議情報

F: 被ばく影響・疫学
放射線被ばくのバイオマーカー探索を目的とした尿プロテオーム解析
*吉岡 進飯塚 大輔桐山 慧大河合 秀彦鈴木 文男西村 まゆみ島田 義也泉 俊輔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 近年,エネルギーや医療面などにおける原子力・放射線利用への需要は拡大しているが,大規模な被ばく事故や災害が発生した際に,患者の被ばく線量を迅速に推定し,治療方針を決定する,トリアージ法(識別救急)は未だ確立されていない。本研究では,このような有事の際でも採取が容易な尿検体から,被ばく線量を推定できるバイオマーカーとなるペプチドやタンパク質を探索するため,被ばくマウスの尿プロテオーム解析を行った。
 B6C3F1マウス(9週齢)に対し,137Csを線源として0.25 Gy~6.0 Gyのγ線を照射した。被ばく後,経時的に採取した尿検体についてHPLC分取し,MALDI-TOF MS測定した結果,m/z 2821のペプチドが被ばくマウス尿中で特異的に増加していた。この分子をESI-Q-TOF MSによりMS/MS測定し,相同性検索を行ったところhepcidin 2であることがわかった。次に被ばく後の尿中hepcidin 2の経時変化をみたところ,それらは被ばく線量と被ばく後の経過時間に依存して増加していた。さらに被ばく後24時間での肝臓におけるhepcidin 2のmRNA発現量を比較したところ,その増加傾向は尿中の結果と類似していることも明らかとなった。
 以上の結果からhepcidin 2は放射線被ばくのバイオマーカー候補の一つとなりうることが示唆された。
現在,hepcidin 2以外にも幾つかのバイオマーカー候補となる分子を同定しており,本発表ではそれらの経時変化や線量依存性についてもあわせて紹介する。
著者関連情報
© 2011 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top