日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OG-1-2
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G: 非電離放射線
突然変異を指標にした太陽紫外線皮膚ゲノム毒性評価
*池畑 広伸東 正一亀井 保博小野 哲也
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キーワード: 紫外線, 突然変異, 皮膚
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抄録
【背景】紫外線(UV)の皮膚に対するリスク評価には紅斑反応に基づく指標が広く利用されているが、ゲノム毒性との関連性が薄く、閾値事象で低線量の評価ができない。我々はマウス皮膚でUVによる突然変異誘発作用スペクトルを解析し、突然変異に基づくUV皮膚ゲノム毒性の評価法を開発した。更に太陽紫外線によって誘発される突然変異量を予測し、実測値と比較して評価法の有用性を検証した。【方法】突然変異に基づく評価指標として「変異原性(変異頻度上昇率)」と「変異誘発抑制」(mutation induction suppression, MIS)を用いた。MISは一定線量を超えると変異頻度の上昇が抑えられ横ばいになる表皮の反応である。MISを誘発する最小線量を利用してMIS反応の作用スペクトルを得た。太陽紫外線による誘発変異量予測値は、変異原性作用スペクトルと太陽紫外線強度分光分布から実効スペクトルを求め、それを波長に対して積分し、更にそれを照射時間に対して積分して求めた。ただし表皮についてはMIS作用スペクトルから同様にして得られる値が照射時間に対する積分で1を超える場合は(MIS発動線量に達したことを意味する)、1に達する照射時間までの積分値を予測値とした。太陽紫外線強度分光分布のデータは気象庁が筑波で測定したものを利用した(データ取得先:www.woudc.org)。マウス皮膚における太陽光誘発突然変異頻度の実測値は、過去に東北大学(仙台)で夏の晴天の正午頃に数回実施した実験のデータを利用した。【結果・考察】表皮・真皮ともに単位時間あたりの変異頻度上昇率の予測値は実測値とよく一致した。正午頃1時間の照射による予測誘発変異頻度は真皮では実測値と一致したが、表皮ではやや実測値より小さかった。この不一致はMIS反応に波長間相互作用がある可能性を示唆すると考えられる。太陽光照射実験で実際に観測したMIS発動最小時間で計算すると予測値も実測値の範囲内に収まった。(基礎生物学研究所大型スペクトログラフ共同利用実験10-501)。
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© 2011 日本放射線影響学会
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