日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OG-1-1
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G: 非電離放射線
(6-4)光回復酵素がイネの紫外線抵抗性に与える影響
*寺西 美佳高橋 祐子宗村 郁子日出間 純
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抄録
紫外線B(UVB: 280-320 nm)によって生じる主なDNA損傷として、シクロブタン型ピリミジン二量体(cyclobutane pyrimidine dimer : CPD)と(6-4)光産物があげられる。生物はこれらのDNA損傷を、光を利用する光回復や、光を利用しない暗修復によって修復している。(6-4)光産物は、CPDに比べて二本鎖DNAに大きな歪みを生じさせるため、ヒト細胞においては暗修復により優先的に修復されることが知られている。植物におけるCPDと(6-4)光産物は、それぞれの損傷に特異的なCPD光回復酵素と(6-4)光回復酵素によって主に修復されている。CPD光回復酵素は、イネのUVB抵抗性を決定する主要因子であることを我々は明らかにしてきた。一方、(6-4)光回復酵素のイネUVB抵抗性への寄与程度は明らかでない。そこで始めに、UVB抵抗性の異なるイネ品種を用い、(6-4)光回復酵素活性を測定した。その結果、UVB抵抗性と酵素活性には相関が見られなかった。次に、レトロトランスポゾン Tos17 の挿入により(6-4)光回復酵素遺伝子が破壊された変異体を用いた解析を行った。変異体の(6-4)光回復酵素活性を測定し、野生型の活性と比較することで、(6-4)光回復酵素が欠損していることを確認した。そこで、UVB付加条件下での生育を検定したところ、(6-4)光回復酵素欠損変異体のUVB抵抗性は野生型と同等であった。シロイヌナズナにおいては、(6-4)光回復酵素を欠損した変異体のUVB抵抗性が野生型よりも低下することが報告されている。それに対しイネにおいては、本研究結果より、(6-4)光回復酵素がUVB抵抗性に寄与する程度は低いと考えられた。
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© 2011 日本放射線影響学会
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