日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OH-2-4
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H: 放射線物理・化学
ガンマ線照射による脂質分解反応および過酸化反応に対するカロテノイド色素の影響
*齊藤 剛藤井 紀子
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抄録
【目的】自然界より単離された放射線耐性細菌はその共通の特徴としてカロテノイド色素を含有していること、そしてこれら細菌の無色突然変異株は電離放射線に対して感受性となることが報告されている。そのため、放射線耐性細菌の放射線耐性機構に含有カロテノイド色素が関与していると考えられている。また、これらカロテノイド色素は細胞中において細胞膜等脂質部位に局在していることが知られている。これらのことより、放射線耐性細菌含有カロテノイド色素は、生体脂質等の生体分子を電離放射線による損傷より防護することによりその放射線耐性機構に寄与しているという生体防護機構が考えられる。本研究では最も単純な生体脂質である脂肪酸(リノレン酸)へのγ線照射による分解反応および過酸化反応に対する、代表的カロテノイド色素(β-カロテンおよびアスタキサンチン)の影響について解析を行った。【方法】1)0.5 Mリノレン酸ベンゼン溶液に対して最終濃度5.0 x 10-8 ~ 8.5 x 10-3 Mとなるように各種カロテノイドを添加し溶液を調製した。2)調製溶液に対し60Coγ線を30 kGy照射した。3)照射試料に対しTBA反応を行い、反応液の532 nmの吸光度を測定することにより、脂質の分解生成物であるmalondialdehyde量を定量し、γ線照射によるリノレン酸の分解反応に対する各種カロテノイドの添加効果に関して解析を行った。4)照射試料のn-ヘキサン溶液の230-236 nmの吸光度を測定することにより、生成共役ジエン量を定量し、リノレン酸の過酸化反応に対する各種カロテノイドの添加効果に関して解析を行った。【結果および考察】β-カロテンおよびアスタキサンチンは共に、γ線照射によるリノレン酸分解反応に対して相対的高濃度で抑制的効果を、相対的低濃度で促進的効果を示した。また、β-カロテンおよびアスタキサンチンは共に、γ線照射によるリノレン酸過酸化反応に対して有意な影響を与えなかった。これらのことより、放射線耐性細菌細胞中においてカロテノイド色素は、γ線照射による過酸化脂質生成後の生体分子損傷に対して防護的に機能し、その生体防護機構に寄与していることが示唆された。さらに、生体中のカロテノイド色素濃度は厳密に制御されている可能性が示された。
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© 2011 日本放射線影響学会
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