日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OH-2-3
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H: 放射線物理・化学
γ線照射条件下でのDNA二重鎖切断確率:単一DNA分子観察手法の活用
*下林 俊典吉川 研一森 利明吉川 祐子
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キーワード: 核酸, 二重鎖切断, 定量化
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抄録
DNA二重鎖切断(DSBs)は細胞に重篤な変化をもたらす。細胞内でのDSBsについては、近年高感度で検出可能である免疫蛍光法が開発され、細胞内でのDSBsの観察例が多数報告されている。しかしながら、この方法では全てのDSBsが間違いなく検出されているか否か、その検証を行うことがほとんど不可能である。一方で、電気泳動などの通常の生化学実験によるin vitroでのDSBsの定量実験は、蛍光強度ノイズに短鎖DNAが埋もれてしまい定量化の信頼性は疑わしい。また100kbpを超えるような長さのDNAに関してはPFGEを用いなければならず、100kbpに一個程度以下の低頻度DSBsの定量化の信頼性は更に悪くなることが知られている。
最近我々は、高感度蛍光顕微鏡を用いて、溶液中における単一DNA分子を直接観察しDSBsを定量化することに成功し、DSBs確率が励起光照射量の二乗に比例すること[1]や、DNAの凝縮転移により二桁DSBs確率がさがること[2]などを報告している。
今回、本実験においてもこの手法を活用し、直接単一DNA分子の長さを測定しγ線によるDSBsの定量化を行った。その結果は、DSBs生成確率はγ線照射量(100Gy以下で)に比例し、1Gyの照射では10Mbpに約1.7個のDSBsが生じることが明らかとなった。これは、ヒト細胞のゲノム総量が6Gbpであることを考慮すると1mGyの照射によって、一細胞当たり約1個のDSBsを生ずることに相当する。
ヒトの核内で凝縮状態にあるDNAについて、その損傷確率を求めることが次の課題である。
[1] Y. Yoshikawa. et al., FEBS Lett. 566, 39 (2004)
[2] M. Suzuki. et al., Chem. Phys. Lett. 480, 113 (2009)
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© 2011 日本放射線影響学会
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