抄録
53BP1は、DNA二重鎖切断が発生すると速やかにその断端に集積する。我々は、遺伝子欠損を容易に導入できるニワトリDT40細胞を用いて、様々な遺伝子欠損細胞でのG1期のDNA二重鎖切断修復活性を調べた。その結果、(1) G1期には、既知のKu70/Ku80/DNA-PKcs経路、ATM/Artemis経路とは異なる、53BP1依存性の新規DNA二重鎖切断非相同末端結合修復(NHEJ)経路が存在すること(Genes Cells, 11: 935, 2006)、(2) E3ユビキチンリガーゼRad18が、G1期には53BP1依存性NHEJ経路で機能していることを明らかにした(Nucleic Acids Res., 37: 2176, 2009):Rad18はG1期にのみ53BP1依存的にDNA二重鎖切断端に集積し、その後53BP1をモノユビキチン化し53BP1のクロマチンへの結合能を高める。一方、染色体末端(テロメア)結合蛋白質欠損により露出したテロメアは、DNA切断端として53BP1を含む修復蛋白質群により認識され、その後別のテロメアと結合し染色体異常を引き起こすという報告がある(Nat Cell Biol, 7: 712, 2005)。我々は、テロメア末端の結合に53BP1、Rad18が必要であるかどうかを明らかにするために、野生株MEF、53BP1欠損MEF、Rad18欠損MEF細胞からshRNAを利用してTRF2を消去し、その後のテロメア-テロメア結合の発生頻度をFISH法で調べた。その結果、テロメア-テロメア結合の頻度が53BP1欠損MEFでは減少することを確認した。現在、テロメア-テロメア結合にRad18が必要であるかどうかを調べている。