日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: SW1-2
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スペシャルワークショップ1. 福島第1原子力発電所事故に対する諸活動から見えてきたもの
ICRPの放射線防護体系と福島原発事故対応
*佐々木 康人
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キーワード: 福島1, 福島2, 福島3
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抄録

1.被ばく状況に基づく防護体系  ICRP2007年勧告は、計画被ばく状況、緊急時被ばく状況、現存被ばく状況という3つの状況に分けて防護体系を整え、1990年勧告の行為と介入という行動(procedure)に基づく体系を変更した。  総論的勧告(勧告物103)の内容を補完する刊行物109が緊急時被ばく状況での人々の防護、刊行物111が現存被ばく状況での公衆の防護であり、放射線攻撃時の対応についての刊行物96も含めて、福島原発事故の防護対策計画作成に当たり参照された。  ICRPは放射線被ばくを、職業被ばく、公衆被ばく、並びに患者の医療被ばくに区分して、防護の3原則、正当化、最適化、線量限度(医療被ばくを除く)を適用している。福島原発事故に関連して、緊急時及び現存被ばく状況での防護対策を述べる。 2.福島原発事故の特徴  ベントと原子炉建屋の水素爆発により多量の放射性物質が環境に放出されたとは言え、多大の努力により予想し得る最悪の事態を起こさずこれまで来たが、原子炉の低温停止には未だ数カ月を要するといわれている。  一方、非常事態が月単位で遷延したことにより様々な問題が生じた。これまでの日単位で収束した事故体験に基づくICRPの非常事態シナリオにはない、新たなタイプの原発事故であると言える。前例のない事態への対応の我が国での経験は国際的に注目され、将来国際的基準の変更を促すであろう。 今回の経験に基づいてリスク・危機管理体制の再構築とリスクコミュニケーションのあり方への展望が求められる。

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