日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PA-31
会議情報

A DNA損傷・修復
定量的テロメアFISH法によるテロメア不安定化の評価
*塚本 淳白石 一乗児玉 靖司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【緒言】 テロメアは、真核生物の染色体末端に存在する反復配列とそれに結合するタンパク質からなる複合体であり、ループ構造を形成して染色体安定化に寄与している。テロメアはDNA複製に伴って短縮し、ループ構造を保てなくなると末端同士が融合し、染色体不安定化を招くと予想される。テロメアFISH法は、細胞ごと、あるいは染色体ごとのテロメアサイズの比較が可能であり、テロメア不安定化の解析に威力を発揮する。本研究では、テロメアFISH法を用いてテロメアサイズを定量的に計測する方法を確立し、これを用いてテロメア不安定化を評価することを目指した。 【材料と方法】 ヒト線維芽細胞(HE7)、及びマウス線維芽細胞(MEF)を継代培養して染色体標本を作製し、FITCで標識されたテロメア配列に相補的な18 merからなるペプチド核酸 (PNA)プローブを用いてテロメアFISH(T-FISH)を行った。その蛍光強度を定量化して、細胞の総分裂回数との関係を解析した。さらに、実験ごとの蛍光強度のバラツキを補正するために、HE7細胞ではT-FISHと共にセントロメアFISHを行い、テロメアとセントロメアの蛍光強度の比(T/C値)を用いて同様に解析を行った。 【結果と考察】 MEF細胞のT-FISHによるテロメアシグナルの蛍光強度は、HE7細胞のおよそ2倍を示した。この強度の差は、マウス体細胞がヒト体細胞よりも長いテロメアをもつことを反映している。一方、この蛍光強度の細胞分裂に伴う減少は、約15~18回の細胞分裂でどちらの細胞もおよそ10%程度であり、差が見られなかった。そこで、HE7細胞についてT/C値により同様の解析を行ったところ減少は30%を示し、T/C値を用いると蛍光強度減少について、両細胞間で明らかな差が見られた。MEF細胞はテロメレース活性を持つために、細胞分裂を経てもテロメアサイズが維持されると考えられる。したがって、本研究の結果は、T/C 値を用いた方が、テロメア不安定化の評価に適していることを示唆している。
著者関連情報
© 2011 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top