日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PA-30
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A DNA損傷・修復
染色体転座形成におけるDSBs修復関連タンパク質の役割
*孫 継英尾間 由佳子原田 昌彦河野 一輝島 弘季木野村 愛子井倉 毅鈴木 秀和水谷 修紀Kanaar Roland田代 聡
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抄録
放射線や抗がん剤はゲノムDNAの二本鎖切断などの損傷を誘導する。ゲノムを修復し安定性を維持するシステムに何らかの原因でエラーが生じた場合は染色体転座などのゲノム異常が形成される。しかし、どのようなメカニズムで染色体転座などのゲノム修復エラーが引き起こされているのかについてまだ不明である。11q23に切断点を持つ染色体転座は、エトポシドなどトポイソメラーゼII(Topo II)阻害剤を用いたがん化学療法後に発症する治療関連性白血病に最も多く認められる。11q23関連染色体転座の転座切断点はMLL遺伝子内BCR(breakpoint cluster region)に集中している。そこで、本研究ではエトポシドによる11q23転座をモデルとして、染色体転座形成のメカニズムについて解析したところ、エトポシド処理した後のAT細胞は正常細胞と比べて、エトポシドによる11q23転座が高頻度に誘導されるとともに、RAD51のBCRへの結合が有意義に上昇していた。さらに、正常細胞と比較してエトポシド処理した後のAT細胞は、組換え修復関連因子RPAやクロマチン変換因子INO80のBCRへの結合が増大することが観察された。これらの結果から、ATMはMLL遺伝子BCRへのRPAおよびRAD51の結合を制御することで、11q23染色体転座形成を抑制することが示唆された。
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© 2011 日本放射線影響学会
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