日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PA-36
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A DNA損傷・修復
グリオーマ幹細胞のDNA修復能
*高居 邦友宮澤 浩人小林 純也竹崎 達也秀 拓一郎平山 亮一近藤 亨小松 賢志
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抄録
グリオブラストーマ(膠芽腫)はきわめて悪性の脳腫瘍であり、増殖が速く、放射線・抗癌剤に耐性を持ち、高確率で再発する。これらの性質の原因として、腫瘍組織中に存在する癌幹細胞(グリオーマ幹細胞)が治療後にも生残することが考えられている。しかし、なぜグリオーマ幹細胞が放射線・抗癌剤に対する抵抗性を有するのかについては未だ明らかではない。放射線や抗癌剤の多くはDNAを障害することで抗腫瘍効果を及ぼすことから、グリオーマ幹細胞でのDNA修復の活性化が、細胞レベルでの抵抗性の有力な要因と考えられる。本研究では、幹細胞機能の一つである腫瘍形成能に直接関与する因子Plagl1とその抑制因子Sox11をマーカーとしたグリオーマ幹細胞を用い、放射線・抗癌剤に対する細胞特性を解析することで、その治療耐性の分子メカニズムを解明することを目的とする。グリオーマ幹細胞(Plagl1陽性)とグリオーマ分化細胞(Sox11陽性)を放射線・各種抗癌剤で処理したところ、グリオーマ幹細胞はDNA架橋剤に対してとくに強い抵抗性を示した。また、グリオーマ幹細胞では放射線照射後のDNA修復の進行を示すγH2AXフォーカスの減衰が遅延した。これらはグリオーマ幹細胞における相同組換え修復の亢進を示唆するものであり、さらに、架橋剤マイトマイシンC処理に対しグリオーマ分化細胞では細胞周期の停滞とアポトーシスが検出されたが、グリオーマ幹細胞ではいずれも殆ど見られなかった。以上の結果から、グリオーマ幹細胞では、相同組換え修復の亢進によってDNA損傷が効率よく修復され、それによりアポトーシスが抑制されることで、高い生残性すなわち治療耐性を得ているものと考えられる。
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© 2011 日本放射線影響学会
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