日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PC-6
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C: 放射線発がん
放射線照射ラット甲状腺濾胞上皮細胞のオートファジーの誘導
*松山 睦美七條 和子蔵重 智美三浦 史郎中島 正洋
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抄録
放射線は甲状腺発癌の危険因子で、小児期被曝は高感受性であり成人期では低感受性とされる。一方、被曝者甲状腺癌の大部分は成人期被曝であり、放射線の関与は不明である。昨年本学会で、X線照射後24時間までの未熟(4週齢)及び成熟(7週齢)ラット甲状腺濾胞上皮にSer 15リン酸化p53の発現が増加したが、p21, Cleaved caspase3の発現増加は見られないことを報告した。これは照射後甲状腺濾胞上皮細胞ではDNA損傷応答は起きているが、p21による細胞周期停止やアポトーシスは誘導されないことを示唆している。オートファジーはプログラム細胞死の形態の一型で、生体の恒常性維持に関与している。今回の目的は、被曝甲状腺濾胞上皮のオートファジーの関与と年齢による相違を調べることである。未熟及び成熟ラットにX線8Gyを全身照射後72時間までの甲状腺組織を摘出し、経時的解析を行った。病理組織学的には照射後濾胞上皮の細胞質膨化と空胞化変性を認め、変性細胞は未熟で照射後24時間をピークに72時間まで高値を示したのに対し、成熟では48時間後に増加し72時間後には減少した。増殖マーカーKi67陽性細胞の発現頻度は、未熟、成熟共に照射後72時間まで有意に減少し、Cleaved caspase3陽性細胞の発現を認めなかった。電子顕微鏡像による観察では、照射後6時間で未熟濾胞上皮の膨化細胞質に小胞体の拡張と分泌物の貯留が認められ、オートファゴゾームも確認された。成熟ではミトコンドリアの膨化や破壊、ゴルジ体のスタック、リソソームの形態異常やマイクロオートファジーが観察された。これらの変化は未熟・成熟共に照射後48時間で最も顕著であった。オートファジーのマーカーであるLC3-IIのウェスタンブロットによる発現は、未熟、成熟共に照射後24時間まで経時的に増加した。免疫蛍光染色によるLC3の発現は、未熟、成熟甲状腺細胞の細胞質にドット状に観察された。甲状腺濾胞上皮細胞は成熟・未熟共に放射線被曝によるアポトーシスは観察されないが、オートファジーの誘導が見られ、その後の発がん過程に影響している可能性が示唆される。
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© 2011 日本放射線影響学会
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