日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PE-10
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E: 放射線治療・修飾
X線照射による細胞膜応答を介したNKG2Dリガンドの発現とその分泌メカニズムの解明
*和田 成一中尾 秀仁外山 康二柿崎 竹彦伊藤 伸彦
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抄録
NKG2Dリガンド(Rae1)の発現は細胞膜のスフィンゴミエリンに富むラフト領域において認められる。NK細胞はNKG2D受容体が、NKG2Dリガンドと結合することで活性化される。しかし、腫瘍では、NKG2Dリガンドを分泌することでNK細胞の認識を逃れると考えられ、このNKG2Dリガンドの分泌には細胞外基質の蛋白分解酵素であるMMPsの関与が考えられている。一方で、腫瘍細胞では、X線照射によってNKG2Dリガンド発現が亢進すると考えられているが、その発現メカニズムの詳細は明らかにされていない。そこで、本研究では、X線照射によるNKG2Dリガンドの発現機構、その分泌メカニズムに着目し、X線照射による細胞膜応答の関与を解析した。 X線照射後1時間で細胞膜のRae1蛋白量は増加し、SMase阻害剤処置により、その増加は抑制された。この結果から、X線照射後、早期にRae1は細胞膜で保持され、このRae1の保持にはSMaseが関与すると考えられた。SMaseは細胞膜上のラフトと相互作用するため、ラフト領域を調べた時、X線照射後1時間ではRae1蛋白量は非照射と比較して変化がなく、SMase阻害剤処置によっても非照射と同程度であった。この結果からRae1はX線照射により細胞膜のラフト領域外で保持されることが示唆された。そこで、SMaseとラフトに多く含まれるカベオリンを免疫染色で観察した時、照射後30分では、SMaseが凝集するところにカベオリンの存在が豊富な領域と微少な領域が観察された。この結果からRae1はラフト近傍もしくは微小なラフト領域で保持されると考えられた。次に、Rae1の分解に関与するMMP14について、X線照射によるMMP14の変化をウエスタンブロット法により調べた時、細胞内ではMMP14の減少が、エキソソーム内では活性型MMP14の存在が観察され、これらはSMase阻害剤処置により抑制された。このことから、X線照射によるエキソソームの放出にSMaseが関与し、活性型MMP14はエキソソームとして細胞外に放出されるため、細胞膜上でRae1リガンドとの相互作用が減少し、Rae1が保持されると考えられた。
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© 2011 日本放射線影響学会
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