日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PF-4
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F: 被ばく影響・疫学
高線量放射線ばく露個体の治療に関する基礎的検討
*石川 純也吉野 浩教門前 暁柏倉 幾郎
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抄録
【目的】 個体への高線量放射線ばく露では、造血組織、腸管粘膜や皮膚など生体幹細胞による再生能の高い組織の障害軽減や再生を目的とした治療が最優先課題となる。数十人から数百人規模の患者が発生した場合、迅速な対応という点から造血幹細胞移植は不適当であり、初期治療では薬物療法が最も迅速に対応できる。しかし、過去の事故例で効果的であった増殖因子の多くは国内で保険適用医薬品でなく、緊急時の対応に必須な初動対応性や常備性などの点から課題が残る。従って国内在庫が豊富な保険適用医薬品により放射線障害軽減や再生効果を得ることができれば、こうした問題は克服される。本研究では、現在臨床応用されている保険適用医薬品の効果的な組合せにより、放射線ばく露個体の治療、特に消化管と造血機能に対する最適な治療方法開発をマウスモデルで検討した。
【方法】 生後8週間のメスのC57BL/6J Jclマウスに137Cs γ線6∼10Gy全身照射後、被験薬を単回もしくは3∼5日間連続投与した。被験薬にはエリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、血小板減少症治療薬(c-mpl作動薬)であるNplate、蛋白同化ステロイド(ND)の 3種及び4種混合カクテルを用いた。経時的生存率の観察と、30日生存マウスの体重変化、末梢血球数、骨髄細胞数、骨髄中の前駆細胞数及び各種発現抗原を解析した。
【結果・考察】 7Gy照射のマウスは約10%が27日間生存後、30日目には全て死亡した。EPO+G-CSF+NDもしくはEPO+G-CSF+ND+Nplateを5日間投与あるいは3日間投与した場合、30日目で30∼40%のマウスが生存した。しかし、これら照射群において末梢血球数、骨髄細胞数、前駆細胞数はコントロールとの間に有意差は認められなかった。これら結果より、保険適用医薬品の組合せにより高線量放射線ばく露個体救命の可能性が示唆された。
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© 2011 日本放射線影響学会
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