抄録
【目的】NF-κB阻害剤Parthenolide (PTL)は有意な温熱増感効果を示した。Step-up hyperthermia (SUH)は最初の一次加温により温熱耐性を誘導し次の二次加温で温熱抵抗性を示す。SUHに先駆けてPTLを処理した温熱感受性の修飾をヒト前立腺癌アンドロゲン非依存性細胞株PC3及びDU145を用いて検討した。更にアポトーシス誘導及びG2/M cell-cycle arrestと転写因子NF-κB上流のMAPK cascadeにおけるERK1/2, p38, SAPK/JNK signalingとの関連を解析した。
【方法】細胞はヒト前立腺癌アンドロゲン非依存性細胞株PC3及びDU145を用いた。PTLはMediumに溶かし2.0µM濃度で6時間処理した。加温は設定温度±0.05ºCの恒温槽に細胞を播種したフラスコのキャップを閉めて浸漬し処理した。アポトーシス誘導動態及び細胞周期画分はFlow Cytometryにより評価した。MAPKファミリーであるERK1/2、p38、SAPK/JNK signalの活性はWestern Blotting法を用いて解析した。
【結果】PC3及びDU145において41.0ºC 或いは42.0ºCでの単独加温による感受性は低レベルであったがPTLの併用により有意な増感効果を示した。更にSUH (42ºC for 30 minutes, 43.0ºC or 43.5ºC for various periods)に先駆けてPTLを併用すると有意な温熱増感効果を示した。44.0ºCにPTLを併用した細胞周期画分はG2/M及びアポトーシス誘導を示すsub-G1 phaseが有意に増加した。また同処理によりMAPK cascadeにおけるERK1/2, p38, and SAPK/JNK signaling活性及びそれらのリン酸化活性は両細胞において若干異なるProfileを示した。
【結語】温熱耐性誘導や温熱抵抗性を示す加温法Step-up HyperthermiaにおいてPTLを併用処理した細胞の致死感受性の増強効果はMAPK cascadeを介したアポトーシス誘導及びG2/M cell-cycle arrestの増加と関連があることが示唆された。これらの結果からPTLは集学的癌治療におけるヒト前立腺癌に対する増感剤の候補の一つであることが示唆された。