抄録
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所の1号機から4号機では、炉心溶融や水素爆発、火災等が発生し、大量の放射性物質が大気中に放出されるとともに、炉心の冷却のために用いられた汚染水等が海洋に放出された。この事故により、原子力施設から20km圏内は避難地域に設定され、住民全員が避難を余儀なくされるとともに、20km以遠においても、一部の地域が計画的避難区域や特定避難勧奨地点に設定された。また、野菜や牛肉等から、食品衛生法における暫定規制値を超える濃度の放射性物質が検出されている。放射性物質に汚染されたがれきや、浄水、下水汚泥等の処理も深刻な課題である。
本発表では、福島第一原子力発電所事故による影響について、大気あるいは海洋に放出された放射性物質の環境中における動態と被ばく経路に重点をおいて概説する。