日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: SS1-1
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スペシャルシンポジウム
福島原子力発電所事故の工学的視点からの分析
*山名 元
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抄録
 福島第一原子力発電所の事故は、軽水炉として世界最悪の事故となった。送電線の崩壊による外部電源6回線の全喪失、想定高さの2倍以上の津波による11台の非常用発電機の停止と残留熱冷却用海水ポンプの故障により、1~3号機において、炉心溶融と原子炉貫通が発生した。また、炉心溶融に伴い発生した水素が爆発し、1号機、3号機および4号機の建屋の上部が大破した。格納容器から漏出した放射性物質が、3月14日以降を中心に環境中に放出された。放出された主な放射性核種の量は、原子力安全・保安院により、131Iについて1.6 X 1017Bq、137Csについて1.5 X 1016Bqと推定されている。また、炉心冷却および使用済燃料冷却プールの冷却のために、注水された水が汚染水となって、その一部が海水中に漏出する結果となり、海洋にも総量として約1.5 X 1011Bqが放出されたと見られている。
この結果、福島県をはじめとする広域の汚染広域や多くの住民の被ばくなどを引き起こしたわけであるが、事故直後の短期的被ばく影響のみならず、今後の長期の被ばく影響の評価の評価や、汚染地区の環境修復の実施に向けて、「放射性物質の発生過程」についての正確な理解が望まれる。本発表では、このような背景において、一連の事故の展開におけるプラントの状況等について、工学的な観点から、包括的に報告するものである。特に、事故発生当時の原子炉の運転状況、原子炉および使用済燃料貯蔵プールでの放射性物質のインベントリー、事故発生後のシビアアクシデント過程、放射性物質の環境への大量放出に至るメカニズム、放出核種の組成や放出量、等についての解説を行う。
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© 2011 日本放射線影響学会
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