抄録
我々は、ミトコンドリアのマンガンスーパーオキシドジスムターゼ (MnSOD) をStableに発現している細胞株を用い、コロニー形成法とアポトーシスの検出により細胞の生残率を解析し、MnSODが放射線照射に対して防護的役割を果たす可能性を報告した (Cancer Res. 61:5382-5388, 2001) 。この結果、MnSODの過剰発現が、ミトコンドリアにおけるROSの産生と細胞内リン脂質の過酸化物 (4-Hydroxy-2-nonenal; HNE) の量を減少させ、アポトーシスを防ぐことを示した。このMnSODによる放射線防護は、MnSODのtransient transfection、また、照射後のビタミンE投与により再現された。また、MnSODは、ミトコンドリアのROSの産生と細胞内脂質過酸化を制御することにより、放射線により引き起こされるアポトーシスに対して細胞を防御する重要な役割を果たすことが示唆された。ミトコンドリア内膜には電子伝達系が存在し、この電子伝達系から電子がもれることにより活性酸素が発生することが示された。ESRによる実験では、ミトコンドリアからスーパーオキサイドが産生される事を証明した。それでは、ミトコンドリア内膜に存在するcardiolipin がX線照射により酸化し、結果として電子伝達系より電子がもれて活性酸素が発生することが考えられた。しかし、cardiolipin にX線を照射しても、cardiolipin が酸化されることは認められなかった。X線照射による活性酸素発生および、アポトーシスには、in situ構築による機構が存在することが示された。