日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: W3-3
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ワークショップ3. 放射線生物学と活性酸素(酸化ストレス)―ミトコンドリアの役割―
ミトコンドリア抗酸化酵素と細胞の放射線への応答
*秋山(張) 秋梅細木 彩夏橋口 一成
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抄録
放射線照射によって細胞中に多くの活性酸素(ROS)が生じる。代謝の過程でミトコンドリアから漏れ出す活性酸素もある。これらの活性酸素は細胞中のDNAやタンパク質、脂質などの生体分子に損傷を与えて、細胞死や突然変異などの障害を起こす原因になっている。また、突然変異の蓄積は細胞をがん化する重要な原因の一つでもある。低線量放射線照射および細胞代謝で生じる活性酸素が複合作用として細胞にどのような影響を与えているのか、それに対して,細胞の酸化ストレスに対する防御機構がどう応答するのかに関しての研究はまだ不十分である。本研究では、(1)活性酸素防御酵素 SODや細胞内の酸化還元状態(レドックス)を維持する酵素グルタレドキシン(Grx)に焦点をあてて、まず、ヒト細胞でのそれぞれの高発現株を樹立し,それらの細胞の放射線に対する細胞応答の変動を調べる。さらに,(2)核DNA損傷、ミトコンドリアの障害、細胞質でのタンパク質の酸化を指標にした低線量放射線の細胞への作用、細胞障害への影響を調べる。  結果:SOD1を過剰発現させた細胞株では放射線への抵抗性がみられなかったが、SOD2を過剰発現させた細胞株は放射線抵抗性であった。そこで次にDSB量を測定した。SOD2過剰発現株でDSB量が減少するという興味ある結果がえられた。また、ROSによる酸化ストレス障害にSOD2の高発現がどのように影響を及ぼすのかを調べた。タンパク質の酸化量、H2O2によって発現が誘導されるOXR1タンパク質の量的変化、細胞全体での活性酸素量、またミトコンドリアの機能維持の有無を形態変化から測定したところ、全てにおいて抑制効果がみられた。 ミトコンドリアに局在している抗酸化酵素は細胞内の恒常性維持や細胞の生存に重要であると考えられる。そこで、同様にミトコンドリアに局在するGrx (Grx2) を過剰発現する細胞株における放射線障害への影響を調べた。この結果もあわせて報告する。
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© 2011 日本放射線影響学会
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