マイクロドジメトリの分野では,DNAや細胞スケールの微少空間内の吸収線量はspecific energy ”z” として定義され,マクロスケールの吸収線量”D”とは区別される。zとDの違いは,確率的な分散を持つか持たないかであり,zの平均値がDとなる。この分散の概念を導入すれば,マイクロビームとブロードビーム実験の違いは,各細胞や細胞内部における吸収線量分布(すなわちz分布)の違いで数学的に表現することができ,両実験結果は同一のモデルで解析できるようになる。発表では,マイクロビームとブロードビームを用いた細胞生存率の測定結果を,染色体と細胞核の2つのレベルでのz分布から再解析した結果を紹介するとともに,z分布の分散が生存率に与える影響について考察する。