日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: W4-3
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ワークショップ4. マイクロスケールとマクロスケールの放射線応答をつなぐ線量を考える
サイズの異なるマイクロビームによる生物影響
*小林 克己宇佐美 徳子
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抄録
我々は、放射光単色X線(5.35 keV)マイクロビーム細胞照射装置を開発し、低線量放射線の生物影響について研究を進めている。本装置は、指向性に優れた放射光を光源としているため、スリットを用いて容易にビームサイズを変更することができる。この特徴を利用すると、細胞あるいは細胞核の一部などの任意の標的を照射し、それらを個別に追跡し照射効果を検出することが可能である。ビームの大きさを変えて細胞内のエネルギー付与領域を変えた実験から、照射された細胞の増殖死、および照射されていないバイスタンダー細胞の増殖死のどちらの場合についても細胞質へのエネルギー付与があるか否かで線量効果関係が、特に低線量域で、異なった。このことから、細胞質へのエネルギー付与によって誘導される細胞内の反応が低線量域での細胞死誘導メカニズムにおいて重要な役割を担っていると考えられる。この仮説を検証するためには、細胞質のみへ効率よくX線を照射する手法を開発する必要がある。そこで、我々は、使用中の培養細胞の細胞核の大きさを考慮して、直径15ミクロンの金の円柱を薄い窒化シリコン基板上に重層したX線マスクを作成した。5.35 keVのX線は、この窒化シリコン基板を99_%_以上透過する一方で、金が重層された15ミクロンの領域では透過するX線は0.1_%_未満となる。このX線非透過領域を、照射標的細胞の細胞核位置に合わせて照射することで、細胞質のみへエネルギーを付与することが可能となる。我々は、従来の細胞照射装置に改良を加え、照射用ステージの直下に、電動ステージにセットしたX線マスクを設置し、50ミクロン角のビーム内の中心に非透過領域を作り、標的細胞の細胞核をこの領域に合わせて照射する手法を開発した。このマスクを用いた照射手法により細胞質のみを照射した細胞の生存率を、細胞質に与えた吸収線量(細胞核には線量ゼロ)に対してプロットすると、線量に対して肩の無い指数関数的な関係が得られた。このことは細胞質のみ照射した時の致死の原因はDNA損傷ではないことを示している。  我々の開発したマイクロビーム照射装置では、以上の様に、細胞全体、細胞核のみ、細胞質のみ、という3種の照射方法が可能であるが、この照射法で得られた結果を比較する時には、どのような横軸(線量)を定義すべきか、という問題が提起されている。
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© 2011 日本放射線影響学会
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