日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: W6-3
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ワークショップ6. 放射線誘発によるDNA損傷の修復機構を考える
DNA修復関連遺伝子欠損マウスにおける酸化ストレス誘発小腸発がん
*中津 可道
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抄録
生体内の代謝活動の過程で種々の活性酸素種が生じ、遺伝子DNAを酸化する。また、放射線が生体内の水分子に作用して生じる水酸化ラジカルも遺伝子DNAを酸化する。このようにして生じた酸化DNA損傷は突然変異を引き起こし、発がんの原因になると考えられている。酸化DNA損傷の中で最も多く生成するグアニンの酸化体8-オキソグアニンはDNA複製を阻害しない損傷で、複製過程においてシトシンと同程度にアデニンとも対合できるので強い突然変異原性を示す。8-オキソグアニンに起因する突然変異の抑制に関与しているMutyh, Ogg1, Mth1遺伝子をそれぞれ欠損したマウスを用いて、酸化剤KBrO3を飲水投与することにより酸化ストレス誘発発がん実験を行った結果、Mutyh欠損マウスでの小腸上皮性腫瘍の発生頻度は劇的に上昇していたのに対し、Ogg1あるいはMth1欠損マウスではそのような劇的な上昇は認められないことが判明した。またDNA損傷を認識して細胞死を引き起こすことが知られているミスマッチ修復系を欠損するMsh2欠損マウス、およびプリン塩基の酸化体であるサイクロプリンの修復を行うヌクレオチド除去修復機構を欠損するXpa欠損マウスを用いて酸化ストレス誘発発がん実験を行った結果、小腸上皮性腫瘍の発生頻度の上昇はMsh2欠損マウスでは顕著に認められたが、Xpa欠損マウスでは全く認められなかった。 これらの実験結果とこれまでに得られている知見を合わせて紹介し、酸化ストレスにより誘発される消化管発がんの抑制におけるDNA修復機構の役割について考察する。
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© 2011 日本放射線影響学会
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