抄録
これまで、非がん影響は、高線量で被ばくした場合の急性の傷害であると考えられ、放射線防護上の扱いは限定的であった。2011年1月に、ICRPのタスクグループ63は、放射線防護を行う上での非がん影響に関する報告書のドラフトを公開し、意見募集を行った。このドラフトでは、脳・心血管系疾患と白内障について、重要な晩発性の障害であると位置づけ、しきい値を従来より大幅に低い0.5Gyに下げることが提案された。その後、4月に公表されたICRPの声明では、水晶体への等価線量限度を下げることが勧告され、この線量限度は、次のIAEAの国際安全基本基準に取り入れられようとしている。本発表では、放射線防護に影響力のある本報告書の概要を紹介するとともに、主要な論点を整理して提示する。