農村経済研究
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論文
日系食品企業の中国国内販売戦略に関する事例研究
-即席麺メーカーN社の商慣習問題の対応を中心に-
金子 あき子大島 一二
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2018 年 35 巻 2 号 p. 9-16

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抄録

中国国内販売を促進する小売向け販売を行う日系食品企業は,小売店における高額な入店料や協賛金の費用負担などの中国特有の商慣習への対応が課題となっている.本論文では即席麺メーカーN社を事例とし,中国国内における小売向け販売を行ううえで直面している中国特有の商慣習である小売店の入店料制度への対応と販売戦略について明らかにすることを目的とする.N社は,入店料等の経費負担により販売利益が薄い大型スーパー・コンビニの現代チャネルよりも,確実に利益が見込める学校や個人商店等の伝統チャネルへの販売拡大に集中することにより,中国全土に販路を拡大させつつある.また,小売店との取引で発生する代金回収問題および物流問題は,商社,1次問屋および2次問屋との協力により解決している. さらに,N社は,伝統チャネルの個人商店や学校等の販売に優位な2次問屋を選択し,N社の経営・営業方針を十分に理解していることを契約の条件としてきた.また,N社と問屋が連携して小売店へ営業することでさらなる販路拡大も可能にしているN社の事例から,小売向け日系食品企業の販売戦略として伝統チャネルへの販路拡大と,独自の流通システム構築が,中国特有の商慣習への対応として重要であることが明らかとなった.

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© 2018 東北農業経済学会
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