農村経済研究
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最新号
農村経済研究
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第38巻第1号(通巻75号) 表紙
2019年度 第55回宮城大会報告特集 津波被災地域の新たな農業の展開とその担い手
  • 伊藤 房雄
    2020 年 38 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
  • 門間 敏幸
    2020 年 38 巻 1 号 p. 4-7
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
  • -宮城県における震災復興を事例として-
    郷古 雅春
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    宮城県における東日本大震災の津波被害を受けた農業復興の現状と,その過程で発生した様々な課題や対応について,主に農地・農業水利施設などの農業農村工学分野における震災復興を振り返った.復旧・復興を進める上で,まず,農地や農業水利施設など,農業インフラの復旧・復興を急がなければならない.また,復興を契機としてこれまでの農業・農村の抱える課題解決も求められた.復旧・復興を進める過程では,技術,事業制度,土地利用,合意形成等の様々な課題もあった.災害復旧現場に立ち向かった現場担当者が法律や事業制度の制約の中で,発災後に次々と生じる困難に対して臨機応変に現場的解決を与え,社会的要請にどのように答えたのか.また,担当者は当面する課題に対して,即時的に実用的な対策や工夫,気づき,教訓,知恵等を生み出し,困難な状況を乗り越える過程を繰り返しながら多様な状況にどのように対応したのか.さらに,復興交付金事業制度では,大区画圃場整備と大型農業機械の導入が同時セットで行われるなど,農業復興の上でも,また大区画化のメリットを早期に発揮する上でも注目される取組みが行われた.これらについて振り返ることは,予想されている南海トラフなどの大地震や頻発する豪雨災害等への備えとして有益である.

  • -乾田直播体系の技術開発・普及を中心に-
    大谷 隆二
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    東日本大震災で津波被災した仙台平野の水田農業の復興を目指し,プラウ耕鎮圧体系乾田直播を核とした水田輪作の実証試験を実施した.津波被害を受けた仙台市沿岸から南部平坦地の水田は10~30 の小区画であったため,これら圃場を合筆・均平して3.4ha と,2.2ha 圃場を造成した.この2 つの圃場を用いて,2013 年から稲-小麦-大豆2年3作の実証試験を開始した.3年間の平均収量は,水稲533kg/10a,小麦403kg/10a,大豆226kg/10a で,安定した収量が得られることを明らかにした.60kg 当たりの費用合計は,水稲6,806 円,小麦7,397 円,大豆14,664 円で,それぞれ2010 年東北平均の57%,46%,72%に低減することを実証した.さらに,合筆した大区画圃場の地力ムラに対応した可変施肥を水稲乾田直播に適用したところ,増収により60kg 当たり費用合計は3ポイント程度低減した.東日本大震災から9年が経過した現在,100ha 規模の土地利用型生産法人が隣接して立ち上がり,プラウ耕鎮圧体系乾田直播はこれらの法人で導入が進んでいる.

  • -井土生産組合の取り組みを事例に-
    鈴木 保則, 唐 冠琰
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    本稿は,井土生産組合を対象に,津波被災地の農業再生を目指した農業法人の取り組みを整理した.井土生産組合は,井土地区の被災農家15 戸が地域農業の再建とコミュニティの再生を目指して設立した一集落一農場型農事組合法人である.そこでは,経営理念・経営ビジョンに示されているように,地域農業の継続と効率に配慮した上で,被災農地の集積を通じて,地域復興のシンボル的存在となることを目的としている.井土生産組合の特徴的な取り組みは,栽培戦略と販売戦略に見られる.栽培戦略としては,乾田直播などの先端技術を積極的に取り入れた稲作の省力化とそれによって生じた余剰労働力の活用による園芸作物の周年栽培が特徴的である.販売戦略としては,「井土ねぎ」のブランド化を軸としたマーケティング戦略と販路拡大に向けたG-GAP 認証取得が特筆すべき点である.このほかに,市民との交流を図る「井土ねぎ祭り」や,元住民の懐かしい顔ぶれが揃う「収穫感謝祭」の「場」づくり,井土地区再生の情報発信としての視察研修の受け入れなど,井土生産組合が震災で崩壊した地域コミュニティの再生に注力する地域貢献活動も重要な特徴の一つである.このような井土生産組合の取り組みは,津波被災地の農業モデルであることはもちろん,労働力の高齢化と担い手不足が深刻化する地域での土地利用型農業のあり方や, 地域コミュニティの再生を考える上でも多くの重要な示唆を与えていると考えられる.

  • 安部 俊郎
    原稿種別: 講演記事
    2020 年 38 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
  • -東日本大震災より8年間の取り組みと今後の展望-
    阿部 聡, 石塚 修敬
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 38-47
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,東日本大震災による被災を契機に設立した株式会社イグナルファーム(宮城県東松島市,以下「イグナル」)を事例に,これまでの8年間の取り組みと,その中で顕在化した様々な課題の整理を通じて,今後の取り組みの方向を提示することである.イグナルは,若手農業者4名が集まって国や県の助成金を活用し,2012年4月よりミディアムトマトの栽培から開始した.その後,独自の販路形成を目指し,株式会社ローソンへの販売をきっかけに,同社とイグナルの出資によってLF石巻を設立した(2014年1月).同年6月にはGLOBAL.G.A.P.の認証を取得し,大手小売向けの販路開拓に有効に作用した.更にほぼ同時期のイチゴ栽培の開始をきっかけに,役員配置を事業部門別から品目別分担に切り替えた.これにより“誰もが代表”という意識は,“機能的配置に基づく代表意識”に変化した.雇用労働力は20代が中心で,栽培者としての技術取得は勿論,パートタイマーへの適切な指示能力も含め,経営者としての成長を期待している.また,技能実習生の将来の活躍の場を広げるため海外進出にも関心を向けている.ただし,まずは現在の生産拠点における生産数量目標の達成,そして,“共にイグナル”ためにも新たに地域農業を担える人を育成し,彼・彼女らの独立に向けた支援を充実させることが課題である.

  • 西田 陽平
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    東日本大震災から8年が経過した.東日本大震災により被災した地域では,立ち上げが早かった経営体はすでに7年目を迎え,農地や農業施設等の整備,技術,経営管理等,立ち上げ段階とは違った課題に直面している.本稿では,まず統計資料等を用いて宮城県の津波被災地の復旧状況を確認し,担い手の状況を把握し,さらに,事例等を踏まえて営農展開の方向性と課題を検討する.本稿においては法人経営体をクローズアップし,また事例として6法人をあげた.その結果,第一に,機械・設備に関する適切な時期に適切な投資ができるか,第二に,新たな販路の確保,第三に,後継者の確保,最後に関係機関ならびに新たな支援の必要性について指摘した.

  • 角田 毅
    2020 年 38 巻 1 号 p. 55
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 和子
    2020 年 38 巻 1 号 p. 56-57
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
  • 門間 敏幸
    2020 年 38 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー
論文
  • 堀 正和
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    政府の「第4次男女共同参画基本計画」(2015年12月25日決定)においては,2020年までに,政策・方針決定過程に占める女性の参画割合を30%に引き上げるとともに,農山漁村における政策・方向決定過程への女性の参画拡大をはかるために,農業委員において,女性の登用「ゼロ」からの脱却,複数名の女性登用等,具体的な目標の設定の取組が求められている.2015年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においても,地域農業に関する方針等に女性農業者等の声を反映させるため,女性農業者の農業委員等への登用を推進すべきとされている.

    農業委員会は,地方自治法によって市町村に設置が義務づけられている行政委員会であり,農業委員会等に関する法律でその設置内容が定められているが,これまで委員は選挙による委員を主体にしていた.しかし2014 年6月の「規制改革実施計画」等の政府の閣議決定にもとづき法改正がはかられ.2016年4月に施行された改正農業委員会法では,農業委員定数の大幅な削減や選挙制度の廃止などの選出方法変更など抜本的制度変更が行われた.これにより,農業委員の3年任期の満了時に順次改正法に基づく体制に移行となり,2016年4月から移行がはじまり2018年10月で全国1,703農業委員会が移行を完了した.移行前と移行後を比較し農業委員数みると,35,060人から23,277人に減少したが,女性農業委員数は逆に2,655人(7.5%)から2,758人(11.8%)に増加した.この背景には,利害関係を有しない「中立委員」を1 名以上選出することを法に位置づけた今回の法改正が大きく影響していた.今回の新制度の下での女性農業委員の登用拡大は,私有財産である農地の権利移動や用途変更への許認可を行う農業委員会を,選挙により選出された地域農業者代表としての性格を持った農業委員が主体となって運営するというシステムを根本から変更した点で危惧され,いわば制度変更のリスクを覆い隠すための「表看板」という限定的な側面を併せ持つとはいえ,制度改正を梃子に,女性を含めた地域農業を支える多様な人材が,農業委員会の運営,更には,農地の公的管理・農業振興に関わる可能性が拡大されたことは一定の意義があると考える.これら新体制移行に伴う女性農業委員の状況について,都道府県の比較を行うとともに,新潟県内において女性農業委員から選出方法の変更等の実態をインタビュー等に基づき検討した.

  • -秋田県におけるエダマメ作付拡大を行う大規模水田作経営を対象に-
    鵜沼 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    秋田県内ではエダマメの作付拡大が推進されており,集落型法人や一戸一法人の作付拡大により全体として面積が拡大されている.産地規模拡大の中心的役割を担っている経営体において導入が見込まれるエダマメ収穫脱莢機の導入条件を検討した.慣行体系と同一の作付規模でトラクターアタッチ型や歩行型による収穫脱莢体系を導入した場合,10a当たり労働時間は減少するものの,所得も減少が見込まれた.トラクターアタッチ型の作業可能面積は慣行体系の2倍程度で,この規模まで拡大を伴った導入をすることで10a当たりの所得の向上が見込まれた.歩行型では作業可能面積まで規模拡大しても10a当たりの所得の向上が見込めなかった.このことから,トラクターアタッチ型による収穫脱莢体系は作業可能面積まで作付拡大することで,10a当たりの所得の向上が見込め,規模拡大する場合に推奨できる.

  • -生活クラブ生協と庄内みどり農協の共同開発米を事例に-
    大西 偉益, 藤科 智海, 小沢 亙
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 38 巻 1 号 p. 79-90
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    産消提携運動は,1970年代に活発となった有機農業運動と深い関わりがあり, 有機農産物を適切に評価するために, 生産者と消費者が直接的な関係を構築したのが始まりとされている. 日本有機農業研究会が1978年に作成した提携の10原則を生産者と消費者の提携の指針としてきたが, 現状にそぐわないと再考の必要性が指摘されており, 新たな産消提携運動の指針が求められている. 本稿では, 「価値共創」の概念を用いて, 産消提携運動における生産者と消費者の関係を評価する. 「価値共創」とは, 近年の生産者と消費者の関係の変化を踏まえて提唱されたものであり, 生産者と消費者が一緒になり価値を創造するという概念である. また, 価値共創した結果, 消費者が感じる価値を「文脈価値」と呼ぶ. 本研究では, 生活クラブ生協と庄内みどり農協との産消提携運動を事例として, 双方へのヒアリング調査と生産者へのアンケート調査を実施した. これらの調査を基に, 生産者と消費者の関係を価値共創の4つの構成要素である「対話」「利用」「リスク評価」「透明性」で評価した. さらには, 消費者の「文脈価値」を, 消費者へのヒアリング調査等から明らかにした. 以上のことより, 産消提携運動を価値共創概念から再評価することができた.

書評
第38巻第1号(通巻75号) 裏表紙
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